浅海における海底堆積物中の音波伝搬速度の計測(OMAE98-4486)
(文責:中村)
M. NARDIN, F. GLANGEAUD, J. MARS
(Domaine Universitaire, France)
1. 概要
超低周波(1〜50Hz)の海中の音波伝搬は、海底下の状況に非常に影響を受けやすい。この種の音波伝搬は環境条件によって異なる。すなわち、深海中の音波伝搬、海底の反射をともなう浅海中の音波伝搬、堆積物中の音速勾配をともなう浅海中の音波伝搬等である。最後の条件がここでとりあげられている。堆積物が層に分かれていないとき、P波の伝搬はすべての堆積層、あるいは堆積層と水中の連続的な音速勾配の影響を受ける。
浅海で中の堆積層中の音速の推定は、種々の導波路の速度分散の影響でより困難になる。この論文では、この影響がある場合に、フィールドデータから堆積物中の音速を計測する方法を述べている。
2. 序
堆積層中の音速の推定には、地震波の反射、あるいは地震波の屈折を用いて調べる方法があるが、本実験では屈折を用いている。音速は屈折波と、速度勾配によって反射する波を用いて得られる。しかし、200mより浅い浅海域で、3-12Hzの帯域幅では、速度分散が強く地震波の伝搬に影響する。この場合、堆積層中の音速は直接的には求められない。この論文では、最初に、地中探査の一般的な紹介をし、次に、浅海での音波伝搬の研究例を示し、3番目に、分散がある場合の堆積層中の音速の推定方法を示し、最後に、フィールドデータとの対比を示す。
フィールドデータは次のような条件で取られた。受波器は海底に設置され、海面付近のエアガンからの信号を記録する。発音は定期的に行われ、14km以上の距離まで届く。
海水中を含む種々の導波路は速度分散特性を変化させ、屈折波や反射波はこの影響を受ける。一方、最初に到達する屈折波は主として堆積層中を伝搬するので影響を受けない。しかし後で来る屈折波や速度勾配によって反射した波はこの分散の影響を受ける。海面反射によって生ずる大きな分散は、水中を伝搬する信号の位相や群速度、あるいは導波路の物理特性によって推定できる。
フィールドデータと、音線理論やノーマルマード理論によるモデルに基づき、分散の補正を行うことで、さまざまな導波路を通ることによって分散を受けるにも係わらず、水中堆積物中の音速を計測できるようになった。
3. 他の地中探査の方法
1] 地震波反射法
振動が地面あるいは海面で励起され、地下の地質構造の境界面で発生した波が、表面で記録される。地下の構造は反射点の往復の伝搬時間で示される。また反射の強度によって地質の変化がわかる。