機器の回転数の変動を2倍ぐらいまで許容できれば、中程度の波の変化に効率良く対応できるようになる。また、高回転で運転する能力は、フライホイール効果でタービンがエネルギを蓄積することにつながる。拘束条件は
(1) 機器にとっての許容回転数の範囲
(2) 出力の滑らかさに対する要求事項
(3) タービンが吸収する馬力の最大値
である。著者らは規則波中及び不規則波中におけるシミュレーションを行い、以下の現実的な制御方針を打ち出した。
(A) 過去のデータを用いて、ある時間間隔(△t)に対し望ましい回転数(N)を計算する。海象が定常であると仮定し、その次の時間間隔(△t)に対し、望ましい回転数(N)を設定する。望ましい回転数(N)は、どの瞬間的な圧力の値に対しても吸収馬力(P)を最大にするように計算される。
(B) 電動トルクの導関数とNの間の特定の関係によりNを変化させる。
(C) タービンによるエネルギの吸収が各々の瞬間において最大値付近に保持されるように、N、Nmax、Nminの関数として電動トルクを特定する。
シミュレーションを行ったところ、方針(A)は、N及びPにおいて結果として生じた変動量があまりにも大きかったため不適当であった。方針(B)においては、Nの変動量は許容できるものであった。方針(C)は、出力の滑らかさとタービンの効率、即ち、出力の質と量の間の関係において、最も適切な妥協点を得ることができた。
5. 論文「欧州の波エネルギ源の評価」
この論文は、1990年代半ばにEUがスポンサーとなった興味深い開発についてのもので、一般的には海洋工学に関連し、その中でも特に、波エネルギに関するものである。ヨーロッパ波分布図は、ヨーロッパ海域の85個所における年毎及び季節毎の波の傾向及び波エネルギレベルを表している。このうち、41個所は大西洋沿岸付近で、44個所は地中海沿岸付近である。この分布図は、風-波モデル(WAMモデル)に基づいている。北海、ノルウェー海並びにBarents海における波向計のデータ、及び、米国海軍の測地衛星(Geosat)並びに米仏共同の地球観測衛星(Topex/Poseidon)を用いての人工衛星による高度データがWAMモデルに対する検証用として十分に提供された。そして、北大西洋においては極めて精度良い結果が得られたものの、地中海における結果は、入力された風力の精度が悪かったために正確さに欠けていた。
本論文において、両方の海に対してエネルギレベル、方向性に関する分布、年毎の波/エネルギの変化を紹介している。地中海において観測されたエネルギレベルは、より低いものであり、かつ、地形の複雑さ、海洋と連携した異なる天気システムの理由で主たるパターンを示さなかった。
この分布図は、パソコン用ソフトパッケージとして利用できるもので、統一された方法論、均質のデータセット及び注意深い評価方法に基づき、ヨーロッパにおいて初めてである全域に渡って波のエネルギを求める試みを紹介している。