3. 論文「容積可変の没水球体による波エネルギの吸収」
本論文は、波エネルギの分野では比較的新しい装置について、基礎的な流体力学的検討結果を記したものである。この装置はAWS(Archimedes Wave Swing)と呼ばれ、AWS B. V. Co. を筆頭とするオランダのコンソーシアムにより開発されているものである。この装置は位置保持用に海底に係留された没水型のフレキシブルな球体で構成されている。その上を通過する波エネルギは、圧力変化に反応した球体の膨張と収縮により吸収される。エネルギは球体の内側に沿って連続して分布しているダンパーにより吸収される。
本論文はこのような球体と波の相互作用の流体力学に焦点を当てている。線形理論が仮定され、剛体としての全ての運動の影響が無視された。さらに、半径の変化が球体にわたり一様であると仮定された。この理論は、Linton(*2)により提唱された没水型球体の流体力学に関する結果を用いている。これは、Thorne(*3)によるUrsell多極膨張法(*4)の3次元展開に基づいている。著者らは、球体の放射振動による放射ポテンシャルの決定方法を示していて、運動のこのモードに対する付加質量と放射ダンピングを計算している。それから、彼らは拡張されたHaskind法則を用いて強制力を計算した。その運動方程式は内部空気の等エントロピーの膨張を仮定して得られた。最適のエネルギ吸収状態が得られ、それは、剛体の振動の場合と極めて類似していることが示されている。同様に、理論的最適キャプチャーファクターの最大値は、浮いていてシングルモードで動揺している剛体の吸収機に関するEvans(*5)の結果に合致していることが示されている。
内部に空気が充満されている球体は、最適又は最適に近いエネルギ吸収に近づくにはあまりにも硬すぎることが判明した。記載されている一つの解決方法は、空気より低い蒸気圧を有する化学物質で球体を満たすことである。もし、硬度の問題が成功裡に切り抜けられたら、フレキシブルな球体における適切なサイズ(即ち、卓越した波スペクトルのほとんどに対し、よいエネルギ吸収を可能にするサイズ)は、ヒーブ運動している剛体の没水型球体の場合よりもはるかに小さくなるであろう。そして、このことがAWS装置の重要な利点であることを示している。
4. 論文「振動水柱式波力プラントの回転速度制御」
本論文はWellsタービン(*6)を装備した沿岸設置型振動水柱によりエネルギ吸収を高める制御方法に関するものである。この論文で報告された内容は、Wellsタービンを使用している全ての研究グループにとって興味深いものである。本論文の狙いは、発電機を応用して電動トルクを制御することにより、タービンの回転速度(RPM)を制御することである。プログラマブルロジックコントローラ(PLC)が制御用に使用されている。制御の目的は、不規則な現実の波において、海象に合わせた回転数とすることにより、タービンの効率を改善しようというものである。一般に、空気流量が小さいということは迎角が小さいという理由で効率が低下することを意味し、また、流量が大きいということも、翼が失速するため効率が悪いということを意味する。制御の目的は、タービンの回転数を流量が大きい場合でも小さい場合でも最良ポイントの近傍で運転するように回転数を設定することである。