波エネルギに関する論文の概要
(文責:Umesh A. Korde, 訳:西村)
1. 概要
OMAE'98において発表された波エネルギに関する下記の4本の論文の概要を以下に示す。これらの論文のタイトル及び著者は以下のとおりである。
1) シングルモードで動揺している2つの物体間の相対運動を利用した波エネルギ変換:Falnes, J., Norwegian University of Science and Technology, Norway (OMAE98-0530)
2) 容積可変の没水球体による波エネルギの吸収:Sarmento, A. J. N. A., Lopes, D. B. S., Luis, A. M., Instituto Superior Tecnico, Portugal (OMAE98-0531)
3) 振動水柱式波力プラントの回転速度制御:Justino, P. A. P., INETI, Falcao, A. F. O., Instituto Superior Tecnico,Portugal (OMAE98-0533)
4) 欧州の波エネルギ源の評価:Pontes, M. T., INETI, Portugal (OMAE98-0534)
2. 論文「シングルモードで動揺している2つの物体間の相対運動を利用した波エネルギ変換」
本論文において検討されたアイデアは波エネルギの分野では新しいものではない。例としては、円筒状のスパイン(*1)で支持されたSalter's ducks、Masudaの浮ブイ型で中央部がチューブ状になっている振動水柱、そして、振動水柱が浮体に対し反動する海洋科学技術センターの「マイティーホエール」が挙げられる。
しかしながら、本論文でFalnesが示した解析方法は興味深い。何故ならば、この理論を一般化できれば、「マイティーホエール」のような多自由度を持つシステムに対して適用できるからである。本論文において、彼は2つの物体のそれぞれがシングルモードで動揺、即ち、ヒーブ運動をしている最も単純な場合の取扱いに線形理論を用いている。この結果は、物体間のインターフェイスに適用する波エネルギの二次変換装置と最適負荷の選定に使用することができる。さらに、Falnesの結果を用いて、システムの2つの固有振動数を予想される入射波のスペクトル分布に合うように選定することができる。全ての結果は、個々の物体に作用する流体力学的パラメータ(付加質量、放射ダンピング、強制力)及び流体力学のカプリング係数を利用しただけである。概略設計においては、2つの物体は流体力学的に弱い結合であると見做すことができ、流体力学上の結合条件は無視してもよい。
Falnesは、2つの物体の流体力学的諸パラメータの単純な関数で表現できる流体力学的諸パラメータを持ったひとつの同等なシングルモードで動揺している浮体の概念を表す単純な数式を導いた。彼は、その同等性の関係を電気回路理論において有名なTheveninnの理論と比較した。一旦、同等のシングルモードで動揺するひとつの物体のアイデアが確立されたら、シングルモードで動揺する物体に作用する流体力及び制御に関する全ての知見が適切な定義を必要に応じて代入する事により適用できる。そして、軸対称及び点対称の2つの浮体に対して得られた結果が本論文中に図示されている。