日本財団 図書館


4. 艇の特徴

1] 一般的事項

“SARA”は、長さ5.5m、直径0.75mの魚雷型のビークルで、3つの主要部分から構成されている。それらは、中央に位置するチタン製の耐圧部、その前後に一つずつ設けられている複合材製のフェアリングで覆われた浸水部である。(図−1〜4参照)耐圧部にはバッテリー、コンピュータ及びその他の電子機器が装備されている。この耐圧部は、浸水部に入ってきた水の重量に見合う中立の浮力を有するようになっている。

推進システムは、船首部の主スラスター1基、低速航行用及びホバリング用としてトンネルスラスター4基(水平方向用2基、垂直方向用2基)から構成されている。

巡航モードではビークルは十字型した2組の後部フィンにより制御される。

2] 船体

ビークルの船首部及び船尾部には複合材製の浸水部が有り、これは構造を支える機能を有している。事実、類似のものとは反対に、重量を減らすため及び利用できる場所を増やすため、金属製のフレームは使用されていない。外板は基本的に3層構造になっている。いちばん内側には炭素繊維強化プラスティック(CFRP)が使用され、必要な強度をこれで保っている。外側の2層は、電気的絶縁のためにグラスファイバー強化プラスティック(GFRP)となっている。同材質が補助推進器の外側の4つのチューブと機器及びフィンアクチュエータのブラケットに使用されている。

構造に用いられた技術は、レース用自動車の部品や航空宇宙産業において使用されているものと同じである。これは、費用は非常にかかるが、重量減が大きいということによるものである。

最終組立段階において、これらの前後の部分は耐圧部のフランジにねじ止めされた。

3] 耐圧部

耐圧部の機能は、バッテリー及び電子機器を格納すること、そして、水中でビークルが中立の浮力となるような浮力体としての機能である。

最大潜航深度1,000mにおいては、外圧は非常に大きな荷重となる。良い重量/浮力比(W/B)を保持しつつ構造破壊を避けるために、高強度で低比重の材質のものが要求されると共に、正確な設計が要求される。

GFRP、CFRP、チタン、高張力鋼の様な候補の中でトレードオフが行なわれた。選定時の条件としては、主として性能(W/B)、コスト、信頼性、耐食性及び製作可能なメーカーの数であった。

最終的に、十分なW/B比、素晴らしい耐食性、高い降伏応力及び繰返し荷重に対する性能の面からチタン(グレード5、6A1-4V)が選定された。

材質のほかに、最適設計を行い、両端が半球になっていて、リングで補強されている円筒形状が選択された。主要寸法は、線形及び非線形の拘束の条件下で、関数を最少化するためのNAGTMと呼ばれるサブルーチンをベースとしたコンピュータ解析により決定された。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION