日本財団 図書館


南氷洋における科学調査用自律型無人潜水機“SARA”(OMAE98-4300)

(文責:西村)

F. Galeazzi (Tecnomare S. p. A., ベニス), B. Papalia(ENEA, ローマ)

 

1. 概要

本稿は、南氷洋におけるイタリア国の研究活動プログラムの一環としてTecnomareとENEAがDune(ローマ)、CNR-IAN(ジェノア)及びローマ大学の協力を得て開発している自律型無人潜水機(以下「AUV」と称す)“SARA”に関し、その設計内容、構造等を概説するものである。また、“SARA”の性能について、制御装置がある場合及びない場合のコンピュータシミュレーションを行ったので報告する。

 

2. 序

ここ2〜3年、科学の世界ではAUVに対する興味が増大している。その理由は、長時間の調査及びデータの採取ができるからであり、また、深海において従来方法よりはるかに安価な費用で調査ができるからである。南氷洋を研究する科学者にとっては、氷の下を航行できるという点において、AUVは更に魅力的なものになっている。

このような理由からTecnomareとENEAは他のイタリアの協力者とともに3年前から“SARA”プロジェクトを開始した。第1フェーズでは基本設計が行われ、第2フェーズでは詳細設計が完了し、現在、建造中である。そして、1998年の半ばには完成し、閉鎖海域での第1回目のトライアルが始められることになっている。“SARA”は南氷洋での科学的作業のために開発されたものであるが、異なる使用方法にも対応できる能力を有していると考えられる。とりわけ、パイプラインの検査用に使用できないか現在検討されているところである。

 

3. 調査ミッション

“SARA”の主なミッションは、南氷洋で数年間に渡り活動してきたイタリアの科学者チームの要求に基づき、そこでの科学的調査を行うことであり、代表的なものは以下のとおり。

・ 水文学的調査(伝導率、温度、水深、潮流)

・ 海洋化学的調査(酸素濃度、濁度、pHなど)

・ 海洋生物学的調査(葉緑素、栄養塩類など)

・ 海洋地質学的調査(海底地形)

・ 海氷下調査(氷山没水部の形状)

上記のミッションに基づき、以下の主要目が決められた。

・ 最大潜航深度:1000m

・ 巡航速度:2m/s

・ 最大航続距離:250km

・ 最長運転時間:35時間

・ ホバリング性能を有すること

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION