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5. 系統試験結果

ピーク周期の関数として全てのテストから得られた伝達係数Ktを図-7に示す。この係数は入射波高に対する伝達された波高の比で表される。図-7からわかるように、実験した範囲のピーク周期に対しては、伝達係数は全て0.5未満であった。スウェイをかなり許容した状態及び圧縮空気を用いてスウェイを一部許容した状態では、ピーク周期の範囲が3.35〜5.74秒の範囲になった。一方、その他の状態では、この範囲は6.83秒まで広がった。

最良の結果は、バラストチャンバー内に空気を入れ、防波堤を固定した状態であった。その時の伝達係数は、ピーク周期が3.35秒の時の0.18から徐々に大きくなり、ピーク周期が6.83秒の時は0.36であった。実験中には計測はしなかったが、係留索の動的応力及び疲労応力はこの状態の時、最大になったようであった。最大の伝達係数(0.49)は、原型で1.5mのスウェイに相当するかなり自由な運動を許容する状態の防波堤のケースで得られた。また、この場合の係留索の動的応力及び疲労応力は最小のようであったが、ピーク周期の範囲はより狭いものであった。

図-8〜12に許容されたスウェイの各値ごとの実験結果を示す。伝達係数、反射係数、分散係数の条件の記載と共に、ピーク周期の関数として実験結果が示されている。分散係数については(4)式により計算されている。得られた結果に対する簡単なコメントが次のサブパラグラフに示されている。

1] 固定防波堤(スウェイ:ゼロ)

この状態は水槽の軸に沿った防波堤の運動ができなくなる迄係留索の長さを短くしたものである。しかし、係留策自体に張力を加えてはいない。2つの系統試験が実施され、その内の一つは浮力タンク下のチャンバーに空気が無い場合、もう一つは7.85kPaの圧縮空気を注入した場合である。もちろん、空気の注入により係留索には張力が加わる。空気無しの場合の実験結果を図-8に示す。反射係数は約0.5であり、一方、分散係数の範囲は相対的に大きい0.54から0.70の間であった。伝達係数は0.31と0.41の間の範囲であった。係留索で拘束された状態での波による防波堤の運動は、エネルギ分散を大きくさせている。

7.85kPaの圧縮空気を注入し、バラストを減じて行った実験の結果を図-9に示す。防波堤の運動は係留索の張力増加により前のケースに比べ減少した。これは、分散の減少に対応して大きくなるエネルギの反射を増大させるが、反面、伝達係数を減少させる。反射係数Krは0.9近くまで大きくなり、一方、分散係数は0.15から0.20の間の値であった。明らかに、ピーク周期が大きくなるに従い、全エネルギの内のより大きい割合の部分がより深いところを伝わって来るという点において、ピーク周期とともに伝達係数が大きくなる。

2] 部分的に自由な運動を許容する防波堤(スウェイ:0.5m)

この状態は原型で0.5mのスウェイに相当するまで係留索を長くした場合であって、この場合も係留索に張力を与えてはいない。このケースもバラストチャンバー内に空気がある場合と無い場合とについて行なわれた。

 

 

 

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