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この場合、防波堤を固定するまでに要した空気の圧力は10.99kPaであった。そして、係留索の張力状態は前述のスウェイがゼロで、バラストチャンバー内に空気がある場合のケースのようになった。

図-10に空気が無い場合の実験結果を示す。ピーク周期が増加し、0.35またはその近辺になる間、伝達係数はほぼ一定となっている。分散係数はピーク周期に比例し大きくなり、0.4と0.5の間の値となった。一方、反射係数は0.7から0.6に減少した。

バラストチャンバー内への空気注入により、防波堤を固定した状態での実験結果を図-11に示す。状況は前述の空気で固定されたケースに似通っているが、今回の場合は、より長い係留索のために、防波堤はより大きい上下動となっている。予想されたように、このテスト結果は図-9に示した結果に似てはいるが、このより大きい上下動のために、より大きい伝達係数となっていて、エネルギ伝達の増加の原因となっている。

3] かなり自由な運動を許容する防波堤(スウェイ:1.5m)

前述のケースに比べ、係留索を適切に長くすることにより、1.5mスウェイの状態が作りだされる。関連する結果を図-12に示す。この図から分かるように、伝達係数Ktはピーク周期が4.25秒の時、最小の約0.3となり、ピーク周期が5.65秒の時、約0.5になる。反射係数はピーク周期の増加に反比例して0.72から0.54に減少する。このとき、分散係数もまた増加する。

 

6. 結論

本稿で検討した防波堤は既に規則波中で実験されているが、不規則波中でも興味深い結果を示した。原型で水深が6.4mに相当するとき、ピーク周期が6.85秒になるまで0.4より小さい伝達係数が得られた。最良の結果は、バラストチャンバーに7.85kPaの圧力で圧縮空気を注入して防波堤を固定した場合に得られた。この場合、伝達係数はピーク周期が3.40秒の時に最小の0.18となり、ピーク周期が6.85秒の時に最大の0.36になった。0.5mスウェイの場合も興味深い結果となった。この場合、伝達係数Ktはどのピーク周期の値に対しても約0.35のほぼ一定の値となった。地中海のような小規模な潮位変動の海では、低潮位の時に0.5mのスウェイとなるように、そして、高潮位の時に固定されるように係留索を適切に制御することにより、上述の実験したピーク周期の範囲に対しては伝達係数が0.3から0.4の間の値となる。さらに、空気無しの形態では、空気圧縮機が不要なので、より簡単な管理ですむ。反対に、スウェイがゼロの状態では、係留索に対して、より強烈な応力が加わる。本件に関する水深の影響については未だ検討されていないが、重要かつ挑戦しなければならない問題があることを示唆している。縮尺された小さいモデルでは直ちに実用的な防波堤の採用とはならない。本問題に関してはより大きいスケールでの実験が望まれる。

 

 

 

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