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ケース1:

メキシコ湾で水深が約3,300ft(1,000m)の海域での掘削計画を立案する場合。坑井の深部における使用泥水の比重が16ppg(1.92SG)と計画された。海底面での温度が43°F(6℃)であり、どのような流体の設計の選択があるかを知りたい。

図4は4種の比重を有する天然ガスのハイドレートの生成温度の予測モデルである。ケース1に対する結果は四角によって示されている。6種の候補流体に対する温度抑制能力の予測値が図5に示されている。図5は、メタンガスと比重0.65の天然ガスのハイドレート生成を防ぐのに必要な温度抑制能力も示している。これから、最低20重量%のNaClを含む流体がメタンガスハイドレートの生成を抑制するのに必要であり、比重の高い天然ガスのハイドレートの生成を抑制するためには20重量%のNaCl及び8重量%のグリコールを含む流体が必要であることが分かる。また、PPG抑制物は、同一の塩分濃度を有する流体におけるグリセリンのガスハイドレート抑制効果程は有効でないことも分かる。

ケース2:

アイルランド西部で水深が約2,400ftの海域での掘削計画を立案する場合(海底面での水頭圧は1,500psi(103bar)が予測されている)。この海域のメキシコ湾流による温暖効果により、海底面の温度はケース1で用いた値よりは高い価として50°F(10℃)が入力される。泥水の水頭圧が低いことから、図4に示す(三角)ように、ケース1における値よりも低い温度でガスハイドレートが生成することが予測される。結果として、ガスハイドレートの生成を抑制するために掘削流体の要求されるガスハイドレート抑制能力は小さくなる。図6は、5種の候補流体の内3種が、このプログラムで使用した全ての比重のガスに対してハイドレートの生成を安全に抑制することが可能であることを示している。

ケース3:

メキシコ湾で水深が約3,300ftの海域で掘削計画を立案する場合。坑井の最終区間で比重14.5ppg(1.74SG)の22重量%のNaClを含むPHPA掘削流体を使用する計画となっているが、ガスハイドレートの生成を適切に抑制するために20容量%のPPGが必要か否かの疑問が生じた。

図4の結果(×印)はケース1(海底面での水頭圧が同様である)とほぼ同様の温度範囲で天然ガスハイドレートが生成すると予測されることを示している。6種の候補流体の効果が図7に示されている。22重量%のNaClを含む流体は、メタンガスハイドレートの生成を抑制することに対してのみ、有効な抑制能力を有していることが分かる。ガスハイドレートの抑制能力を拡張するためにPPGの含有量(容量)を増やした入力を行った。PPGの濃度が11容量%では、流体の化学的性質は比重0.7の天然ガスのハイドレートの生成を抑制するためには「境界線」と考えられる。PPG濃度を15容量%まで増加させることがよりよい結果を与える。また、ここでシミュレーションを実施した状況下においては、NaCl濃度が22重量%のPHPA泥水に20容量%のPPGを添加することは、ガスハイドレートの抑制の観点からは「やりすぎ(overkill)」であることを示している。

 

 

 

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