4-2. 今回の課題
今回のシンポジウムのテーマと開催方法は(社)自然資源保全協会としても初めての取り組みであり、平成10年度は試行錯誤の連続であった。約半年の間に全国6ヶ所でシンポジウムを開催するには準備不足であり、何とか開催はしたものの、それだけで精一杯という感じが否めない。全国の問題をざっと網羅できたのは当協会には収穫であったが、果たして各地域の問題解決に新たな一石を投じることができたかどうか、疑問である。日頃首都・東京において、全国的・国際的視野で活動する者が、各地方でシンポジウムを開催する意義は何なのか、自問したい。
開催地域の方々のご協力のおかげで、どの地域も講師のレベルは高かった。しかし、広報活動が追いつかず、せっかくの機会を逃した方々も多かったのではないだろうか。宣伝費が潤沢にあるわけではなく、不特定多数に訴えかけることはできないので、数をこなせばいいというものではないが、参加対象を絞り込んで、情報を必要としている層には確実に伝えられるようにしたい。
開催地毎の講師選びのバランスはよかったと思うが、全体の流れの中での位置づけは甘かったのではないか。参加対象、テーマ、フィールドの絞り込みが必要であろう。
タイトルがかたくて参加しづらいという参加者の声があった。途中からサブタイトルをつけたが、たしかに実際の開催内容とくらべてあまりにかたい。どんなに中身がよくても、参加してもらえなければ開催する意味がない。情報の伝え方に工夫が必要である。
開催日については、プライベートで参加する勤め人は土・日、公務員やコンサルタントなど業務の一環として参加する人は平日を希望している。これも開催目的と参加対象を絞り込むことによって決まることである。
4-3. 今後の展開
今回得られた知見や課題をもとに、これからの海洋汚染防止のあり方について(社)自然資源保全協会から提案をして行きたい。
そのために、目標の設定、重点課題の洗い出し、テーマと参加対象の絞り込みを入念に行う必要がある。今後は事前調査(資料やヒアリングなどによる情報収集)・検討を充実化させ、広報活動もホームページや各地の水環境に関わる人々のネットワークなどを活用して幅を広げていきたい。得られた知見なども報告書発行だけでなく、多様な手段で情報を発信し、より多くの人と共有していきたい。
海の環境指標である魚介類から海を見ることは有効だと思い、今回は意識的に漁業者にスポットをあててみた。だが、海は海だけ見ていてもきれいにならない。陸から来る汚染を克服していくには、市民の意識があらゆる場面で環境保全に向いていかねばならない。
近年、大型公共事業の見直しが進められ、自然環境破壊防止などを理由に計画が中止・凍結されるようになった。産廃処分場、河川改修、埋め立てなどの事業の是非を問う住民投票も盛んに行われている。国家や地域の舵取りは多数の国民、市民の意識によってなされるものであり、その方向性は確実に環境保全に向かっている。
市民が環境保全の目利き・監視役となり、環境保全型の行動をしていくには、具体性が必要である。一連のシンポジウムがその助けとなるよう今後の活動を展開したい。