つまり、一方でアカトンボに対して何とも思わない学生が、一方ではムツゴロウに同情を寄せ、なおかつ「田んぼにも同じような国民の眼差しを向けることができれば、我々の将来はバラ色だ」というわけです。つまり、ムツゴロウはそれだけ表現されたということです。あの干拓問題によってです。
僕は漁業の未来も結構明るいのではないか、と思います。
【柳沼】漁業の未来は、結構ではなくて、相当明るいです。
今日で自然資源保全協会のシンポジウムに2回お招きをいただいて、本当にありがたく思っています。大いに、多くの人に啓もうしていただきたいと思います。環境問題の8〜9割は教育、啓もうではないかと思って、日常的にやっています。そういう意味で、漁業の立場でこういうところに、北海道弁で「かててくれる(=加えてくれる)」、かてていただきまして本当にありがたいと思っています。私どもがもし植樹運動をやっていなければ、こういうところにも出る機会がなかったと思っています。
それと、ケビン・ショートさんのメモをチョロッと見ましたら、全部英語で書いてありまして、すごいな、と思いました。小泉八雲さんのような感じで、日本人である私どもが少し肩身の狭いような一。こういう方が日本にいるということを大変うれしく思っています。
漁業のことを少しだけ宣伝すると、農業以上に未来産業です。そして、生態系産業です。農業は「いや、それ以上だ」と言うはずですけれども。
要するに、私どもは地球規模で全部つながっていますし、場々としています。手つかずです。日本政府はまだ海洋に農業の1/10、1/100も金を使っていません。こんなことを言ったら怒られるかもわかりませんが、そういう実態なのです。
それは、食料としての漁業の位置づけがまだない、ということなのです。それを今日、警鐘乱打されました。今日は「ウーマンズフォーラム魚」の白石ユリ子さんが一番前に座ってにらんでいる。この方は東京を中心に、全国500〜600人の会員と「お魚」を市民の立場で宣伝している。このような立派な方にはノーベル賞でもあげたいくらいです。そういう方も含めて「魚は未来があるよ。本当に大切だよ」と言いたい。
こういう会を通じて、漁業は未来の産業である、生態系産業である、地球産業であると大いに理解していただけるのではないかと思います。私どもは産業の中で結構やっていますが、こういった市民レベルを含めて大いにやっていただきたいと思います。
【小倉】最後にケビンさん。考えは英語で考えられるのでしょうか。その辺も含めて、少し。
【ケビン】実は全部日本語で書いてあります。日本語をローマ字で書いてあります。ここには「身近の自然の力」と書いてあります。
僕はワープロでしたら日本語を漢字で書けますが、手書きでしたら難しいのでローマ字で書いています。
日本の自然のすばらしさ、日本の伝統的な暮らしのすばらしさを強調してきましたが、皆さん僕の言うことを聞くだけではなくて、自分でそれを確かめてもらいたいと思います。
この東京からどちらの方向へ行っても、電車に乗って1時間も走れば、必ず里山、カントリーサイドに出るのです。電車に乗って、そこに行って、窓から見て、田んぼと杉林が現れてくれば、駅に降りて散歩に出かけてください。南の方に行けば、東京湾がありますし、房総半島と三浦半島には磯や砂浜があるのです。
そこに行って、実際どのくらいの豊かな自然があるか。その自然の中で散策して、いろいろなものを見つけるのは、いかに楽しく、いかにおもしろいか。これを自分で体験してください。
そうすると、自然保護に今までと全く違った角度からアプローチできると思うのです。自然保護は理論のレベルだけでは理解できないと思う。やはりある程度自分の体験を通して理解しないと正しく捉えらえられないと思うのです。その一番早い方法は自分で少しでも体験してみることです。