このようなシンポジウムがあることを私は全く知らず、一昨日ある方から聞きました。これは大変残念なことだと思います。もっと広くいろいろな方が来て、こういうお話を聞くべきではないでしょうか。
私は外国生活が非常に長く、むこうに住んでいたときにいろいろ考えさせられました。オーストラリアの小学校、中学校で教えていたときに、日本と非常に違うと思ったことがあります。オーストラリアの都市生活は日本と同じように集中度が高い。そういう中で、オーストラリアの子どもは、自分のうちの庭で何ができるか、自分の庭に来た小さなトカゲをどうやって殺さないでおくか、一生懸命考えていた。そういうところがものすごく日本と違う。
日本人も自然に接するような教育をしていますが、教育者という手を経るところが日本の特徴ではないかと思います。日本は自分でしない、便利なものは何でも海外から入れる、我々ひとりひとりがそうしてきたことで、大きな工業化、経済成長が達成されてしまった。このような日本で、21世紀にどういうことができるか、これからこのような場でぜひ考えていただきたいと思います。
【小倉】シンポジウムのPR不足だ、というご意見がありました。
【会場3]】今日は大変勉強になりましたし、刺激も受けたのですが、陸域に起因する海洋汚染の見過ごしてはならない論点として、エネルギー問題があると思うのです。ダム問題については若干の指摘がありましたが、原子力発電所の温排水の問題は、プルトニウムの問題とも絡まりながら、若い世代に大きく負荷してくるわけです。今日のシンポジウムの延長線上にそういう論点を外さないような現代社会への切り込みが非常に大事だろうと思います。
今後の課題ではありますが、日本のエネルギー問題、とりわけ原子力開発によってものすごい勢いでたまっている放射性の廃棄物の問題等が重大な問題として浮上しており、物質循環の再生に対して大きなネックとなっていることをご報告しておきたいと思っています。
【小倉】エネルギー問題は大変重要ですから、今後そのような機会をつくっていきたいと思います。
それでは、最後にまとめなくてはいけません。一言ずつ、今までの繰り返しになってもかまわないのですが、主題である「身近な自然を見直して、陸域起因の海洋汚染を防止するために、私たち一人一人が何をすればいいのか」ということを簡単にまとめていただいて、この会を締めたいと思います。
【小島】今日のタイトルにあります「身近な自然の力を見直そう」。これはこの場にいる一人一人が見直した上で、自分には何ができるのか、そして、できると思って自分で見つけたことをすぐ今日からやる、ということが一番大事なことだと思います。
先程の小倉先生のお話にありました排水の問題、ゴミでもそうですし、庭先の小さな生き物をじっと観察するところからでも何でもいい。だれでもできることは簡単に10個くらいはあると思うのです。それをきちんと一人一人が考えて、このままで終わらないでやることがとても大事だと思いました。
【宇根】僕なり我々の仲間の最近の結論は、日本の農業の未来は明るい。
なぜかというと、消費者が身近にいて、しかもきちんと表現すれば絶対反応してくれる。これは我々の最大の宝物であり、武器なのです。ただ、それを十分に表現できていないし、消費者と十分につながっていない。これが我々の反省なのだ、ということに達したのです。
最後に例をあげれば、僕も農業大学校で教えているのですが、うちの学生に「アカトンボが好きか、嫌いか」と聞くと、みんな百姓の息子・娘ですが、「好きだ」というのが1割、「嫌いだ」というのが1割、8割は「何とも思わない」。皆さんに聞いたら全然違うと思います。それだけアカトンボとのつきあいがなくなっているのです。
でも、そういう学生がこういうレポートも書くのです。諫早の問題について、学生に「ムツゴロウか、干拓派か」と聞くと、これから百姓になろうという子が100%ムツゴロウ派です。彼らは少数ですけれど、こういうレポートを書きます。「ムツゴロウにあれだけ国民の同情なり関心が向いているのに、なぜ田んぼのメダカとかドジョウとかホタルに関心を向けられないのか、これは私たちの今後の課題だ」と。