これはどういう現象かというと、ダムの中にたまったいろいろな養分、枯れ葉、そういうものが全部腐敗作用を起こして酸素を全部吸収して、無酸素状態でヘドロ化してたまっていたのです。それを下を開けたものですからドッと出て、黒部川は一時は死の川、富山湾は死の海になったのです。
漁業者は非常に怒りました。あの手この手でなだめすかされて、2回目もやられたと聞いていますが、非常に無神経なやり方をとっているようで、かなりの養分が沈降していると想像ができます。
「魚付林について、いわゆる北の東北、北海道と違って、南の方ではその効果はいかがなものか?歴史的にもどうか?
それから、こういったものを整備する予算もないのではないか?熊本あたりでは沿岸等振興構造改善等の事業でやっている」
「森と川と海はひとつ」という認識で、私どもは運動にずっと取り組んでます。その究極は川です。私どもは森の養分、森のいろいろな機能を運ぶのはすべて基本的には川だと思っています。三面張りをなくさないといけない。
流域、一般的には水辺林と言っています。河畔林は下の方なのです。渓畔林というのは上の方なのです。ごちゃごちゃになっていますけれど、この渓畔林、河畔林があるべきだと。それが私有地その他、河川敷以外の部分は、すべて一瞬の内に農地その他のために伐採されます。それを町有地にするなり、公的なものとして網をかぶせてください、というのが保安林なのです。
保安林は17種類が法であります。その大部分は防災の森です。防災の森として17番目か16番目にある魚付林というのは、その0.04%くらいしかない。戦後4万何千haあった魚付林は、現在2万haと半分になっています。ところが、その他の16の保安林は百倍近く伸びています。要するに防災の森です。
今回の河川法の中でも樹林帯という言葉が出て、あたかも森を認めたようにいっていますが、これは堤防の外です。堤内と言葉では言いますが、それは堤防の外に植える木のこと。水があふれたときに弱める、これを樹林帯という。これを法で名前を載せるというだけで、基本的には河畔林なり水辺林全体を河川法で認めたことでは絶対にありえないのです。
そういうことも考えて、我々は当面魚付林の指定、網をかぶせる。沿構の事業でやらざるをえないのは、防災の森はものすごく補助率が高いのですが、魚付林には何もない、ゼロといってもいい。補助は何もないから、つくるにも管理するにも林業部は知らん顔をせざるをえないという実態です。だから兼種指定してしている。防災の森の脇にちょっとしたという例が北海道で1、2出てきましたが、そういう流れがある。これだけとりあえず説明しておきます。
【小倉】次に、「里山、里地」の件。アンケート用紙にこのようなコメントがありました。
「里山の必要性、植林の意義など、話では聞いていましたが、具体的にその重要性を認識できました」
先程、日本には伝統的な維持管理があるが、最近は欧米型の科学技術によってそれが壊されてきた。そのふたつの組み合わせが重要だ、ということを言われました。ケビンさんはアメリカ生まれですが、アメリカでの事例と比較して日本の伝統的な維持管理のやり方がいいのかどうか、もう少しその辺を補足をしていただけますか。欧米ではどうですか。
【ケビン】僕が申し上げているのは、日本の伝統的な管理のあり方が崩れたけれど、そのかわりになるものがまだ日本にはないということです。基本的に日本には自然を守る法律や体制、政策はほとんどないと言っていいくらいの現状です。実質的に機能する法律や制度、もちろん環境アセスとかそういう制度はありますが、基本的には自然を守るためには機能しないです。
アメリカは国土が全く違うのであまりいい事例にならないかもしれませんが、例えば水産資源だったら、一応政府の生物学者が管理責任を持っている。
それと対照的に、日本は昔から漁業者そのものが資源の維持管理を漁業権に基づいてやります。それで今までは漁業権制度に基づいて、漁師たちが資源とか海の自然を守ってきた。今になってその制度がかなり急ペースで崩れかけています。