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パネルディスカッション 「身近な自然の力を見直そう」

【コーディネーター】 小倉紀雄(東京農工大学 農学部 教授)

【パネラー】 

ケビン・シヨート(ナチュラリスト/文化人類学博士)

柳沼武彦 (北海道指導漁業協同組合連合会 参事・環境部長)

宇根豊 (福岡県農業大学校 講師)

小島あずさ (クリーンアップ全国事務局 代表)

 

【小倉】ケビンさんの基調講演、3人の方の事例報告に対していくつか質問が来ています。そのお答えと基調講演・事例発表を聞いての補足説明を、できるだけ簡潔にしていただきたいと思います。

最初に森から海ということで、上流の方からいきたいと思います。柳沼さんいかがでしょうか?

 

【柳沼】上流とおっしゃっいましたが、私は川下と理解しています。それはそれとして、森から流れてきたいろいろなものが、海に多大な影響を与えている。そういう発想で私どもは取り組んできました。

ご質問は3つあります。

 

「植林した森の手入れはどうしていますか?」

11年前、私どもは北海道森林組合連合会と「私どもはただ植えるだけですよ」と、きっちりと約束をしました。言ってみれば、皇后陛下みたいなもので、ヨイショとお手植えをやれば、「後は頼みますよ」と。そういうスタンスで、苗木の調達、技術、管理、そういうものを基本的にお願いします、とやったわけです。基本的にその流れでずっとやっています。

森林組合でもなかなか対応が難しいところがたくさんあります。かなりの部分、1/3くらいは、母さん方が3年に1回なり、毎年出かけていって、下草刈りとかをしています。そういうことで、ケース・バイ・ケースといった方がいいと思います。

行政は営林局とか道庁の出先の林業関係の機関が一生懸命にお手伝いしてくれて、土地や苗木の提供などがあります。そういうところは例外なく私どもが植えた後きっちりと管理してくれている。おおむね植えっぱなしになっていない、と理解しています。

林業者は必ず「植えるのは1年かもしれないけれど、手入れは99年だぞ」と言われます。私どももそれは肝に銘じて「その通りです」とやっています。

 

「途中のダムでせっかくの木の養分が沈殿してしまうという話もありますが…」

実際、養分が沈殿する問題、「陸域」と「海域」との関係はまだ解明されていないのです。今、小倉先生からお話のあったような研究も部分的には出ていますが、基本的にはそういうものの検討が組織的、学問的にはなされていないと思います。私たちもそれを探しているところです。

全国には大規模ダムが3500くらいあると言われていますし、北海道でも200くらいあります。そのほか砂防ダムや堰、これはもう1河川に50や60、たくさんあります。河川には30〜50の砂防ダムが必ずあります。小さいものですが。

日本の河川はほとんどダムだらけで、手の付かない川はない。ダムがなければ三面張り。北海道には1300の水系、2万数千本の川があるのですが、この中で手の付いていない川はまずありません。知床に40本くらいの水系がありますが、知床といえども手の付いていない川は3本くらいしかないと北大の小野先生が調べていました。ほとんど手の付いた川の中で、途中の構築物がどのように養分を止めているか、非常に心配しています。

富山県の黒部ダムがありますが、ダムが土砂をせき止めるということで、出し平ダムという数十倍をかけて造った実験用のダムがあります。これはポカッと下が開くのですが、それを開けたら真っ黒い泥土が一斉に海に流れました。一時黒部川は死の川になった。生物という生物は全部死んでしまった。

 

 

 

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