日本財団 図書館


■陸→海:汚染物質削減2] 発生源対策

次が発生源対策です。発生源で見ますと、生活系の排水が環境に与えるインパクトが大変大きい、ということがわかっています。これはかなり一般的にわかってきたことです。

それでは、家庭、台所でできる雑排水対策の効果はどの程度あるのでしょうか。具体的には、台所の三角コーナーにろ紙袋を置く、調理クズをふき取って水に流さない、油を適切に処理をする。そうすると、BOD、COD(有機物の目安)、あるいはSS(懸濁粒子)が約20%削減されることが多くの自治体の調査で明らかになっています。

台所でちょっとした対策をとると、汚れの約2割が削減される。仮にこれを東京湾流域を例にしまして、現在では2600万人くらいと考えられています人口の2割の人がこういう雑排水対策に協力すると、1日にCODが約6t削減されることになります。この効果は、例えば30〜40万人規模の下水処理場で下水処理をする効果に相当するということで、大変大きな価値をもっています。30〜40万人規模の下水処理場をつくろうと思うと、非常に大きなお金がかかります。場所もない、時間もかかるということで、水がどんどん汚れてしまうわけです。その前にちょっとした心がけで台所で対策をすることによってこれだけの効果を発揮する。

まず発生源でできるだけ汚れを削減することが、大変効果的であるということもわかってきます。

家庭だけではなく、それぞれの工場、事業所、畜産業で発生源対策をすることも重要です。

川に流れ込む前に水路があります。水路で何ができるかということですが、一つの事例として、炭を使う。森林、雑木林を使ってつくっていた炭を、今度は水質の浄化に使おう、という試みが10年ほど前に八王子の主婦の小さなグループから始まりました。この炭がなぜ水質浄化の役割を果たしているのか。炭を顕微鏡写真で見ますと、ハチの巣状にたくさんの穴があいています。この穴の周りに汚れの成分が吸着します。したがって、水から汚れの成分が取られる、という効果を発揮します。そういう試みが10年ほど前に八王子の主婦のグループから始まり、いろいろなところに広がってきました。

これは東京都の日野市の事例です。水路清流課、行政自ら、雑木林を切った木を使って、炭焼きがまで炭をつくり、農業用水路に炭を入れ、炭を通過する前後で水質を測ってその効果を見るという試みを私たちと共同でし、実験した結果があります。

炭を使った浄化というのは、経験的なものから始まったことなのです。八王子の主婦のグループはいろいろな水質の簡易測定法で水質測定をした結果、自分たちの汚した生活排水が川を汚している最も大きな原因だ、ということに気が付きました。次世代を担う子どもたちにきれいな川を残さないといけない。では、私たちに何ができるのか。身近にできることはいろいろあるけれども、例えば木炭を使ってみよう、という動機から始まったことです。したがって、科学的な根拠がなかったわけです。

それに対してよく質問を受けます。「木炭はどのくらい使えばよいのですか」「木炭はどのくらいもつのですか」と。木炭による浄化の問題は科学的な根拠から出てきたものではなく、経験的なことから出てきたので答えがなかったのですが、私どもがいろいろなところと協力しながら大体の目安がついてきました。

これは東久留米の黒田川での例です。黒田川の水量は1秒間に20l程度で、非常に小さな川です。水質はBODが40mg/l、SSが16mg/lと、非常に汚れたドブ川です。ここに木炭を2.5t、行政の方で設置しました。そこで、木炭を設置した上流と下流で水質をずっと連続して測って、その水質の差があらわれる期間が木炭によって水質が浄化されたという定義をします。ある程度時間がたってしまうと、目詰まりが起こって、木炭があってもその上を汚れた水が素通りするわけです。その期間が13〜15日、約2週間ということになります。

このくらいの規模でも、汚れが非常に多い川では炭はあまりもたない。ですから、仮に先程の雑排水対策によって汚れを半分に、BOD 20mg/lくらいにすると、この木炭による浄化可能な期間は倍になると言えると思います。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION