鷲尾圭司さんは明石で、林崎漁協職員として研究活動をなさっています。海の環境のこと、そして漁業者として、消費者として見た海の問題についてお話しいただきました。
酒井秀幸さんは武庫川の上流で有機農業を行っている方です。武庫川ネットワーク代表として、武庫川の上下流交流を図っていこう、川に子どもを連れて行ってもっと遊ばせた方がいいのではないか、というお話をなさいました。
田中哲夫さんは武庫川の中流あたりの大学と博物館にお勤めで、淡水魚の研究をなさっています。川に水がないこと、堰などの障害物が多いことなど、魚がすみづらくなっている川の現状についてお話しいただきました。
藤井絢子さんは琵琶湖をフィールドとしています。滋賀県は環境先進県と言われるけれども、環境問題は複雑化しており、琵琶湖の問題の克服に向けた試みとご苦労、悩みをお話しいただきました。この方は単に「市民運動家」だけではなく、事業者でもあって、エコロジー商品の開発や普及、販売も手がけていらして、独自のお話を聞くことができました。
全国5会場の概要をざっとお話ししました。
総括
小倉 紀雄 (東京農工大学 農学部 教授)
ケビンさんの基調講演、柳沼さん、宇根さん、小島さんの事例報告、短い時間でしたが、大変よくまとまっており、主張が明確に出されたと思います。
過去5回の会場でのお話をまとめるのは、短時間では不可能に近いことですが、主題である「身近な自然を見直して、陸域から来る汚染物質を防いで、海洋の汚染を何とか防止する」というテーマに従って、私なりの考えでまとめていきたいと思います。
<以下、OHP併用>
環境庁の環境基本法では、我が国の国土空間を山地、里地、平地、沿岸海域と、4つに分類しています。人間活動、水環境への影響を与えるような主な人間活動をここに挙げてみました。それぞれ本日の講演をされた方々は、森の話、雑木林の話、沿岸でのゴミ散乱の問題など、いろいろなことでこの問題について触れていただきました。これをひとつの流域という単位で考えることが大変重要である、とケビンさんも指摘されています。
それを簡単にまとめてみると、雨が山に降って、それが森を通って、川になって、一部は地下水となって最終的には沿岸から海にいく。そのプロセスの中でいろいろな人間活動がかかわっています。工場があり、畜産業があり、農業があり、住宅がある。
この流域全体で、ひとつのシステムとして、陸から海に運ばれる汚染物質をいかに削減していくか、ということが今回のシンポジウムの主題ではないか。
それを大きく3つに分けて考えてみました。
1つは、森林・緑地の保全という問題
2つ目は、発生源対策
3つ目が、自浄作用を活用していく
そういう3つについて考えていきたいと思います。