動物だけが迷惑を被っているわけではありません。これは小型船のスクリューに釣り糸が絡んでいる写真ですが、この他にもポリ袋のようなシートを船のエンジンが吸い込み、焼き付けを起こすことや、海女の方のような漁業者が潜水をしていて、海中に沈んだゴミのために命の危険を感じる事故に遭うなどの例もたくさん報告されています。
先程申し上げた、私たちが使っている調査シートです。元々のものはアメリカの環境団体が作り、材質別・品目別に80種類のゴミを調べるシートです。まず、プラスチック・木・紙・金属といった材質によって大まかに分けられ、さらにその中で、例えば、ビニールのシートや袋という項目があると、プラスチックの袋の中でもお菓子の袋とかスーパーやコンビニの袋というように細かく分かれています。2〜3人が組になって、ゴミを拾いながら、声に出してカウントしていく方式で調べています。
この方々は拾いながら数えるのが難しそうなので、まず拾って、全部開けて、分けて調べています。やり方は自由ですので、どんなやり方でも構いません。
このように3人ぐらいで組になって、考えながら拾っていきます。たしかにとても面倒です。
でも、ただやみくもに拾うと全てひっくるめてただのゴミになってしまいます。
「たばこのフィルター?これ、紙じゃあないの?」
「いや、違うよ。化学繊維だからプラスチックのところだよ」
このように考えてやることで、身近な、何気ないポイ捨てゴミが何でできているのか?もっと想像力を働かせると、捨てたのはだれか?船から捨てられたのではないか?上流の川から流れてきたのではないか?と、どんどん原因の元を探っていく想像力を膨らませる。そういう意味でも、数えながら拾うというのは、有効な面を持っていると考えています。
この人はほとんど動かず、1ヶ所で30分足らずの間にこれだけのフィルターを拾いました。日本で130項目の散乱ゴミについて調べると、毎年トップのアイテムが、たばこのフィルターです。愛煙家の方がいかに気軽に捨てているかが、この数字からも明らかに浮かび上がってくると思います。
私たちがいつも活動している神奈川県の湘南海岸のゴミを拾う前の光景です。毎年9月半ばの台風が多い時期にしています。このときもクリーンアップ実施1〜2日前に台風が来て、川の中にたまっていたゴミや海の中に沈んでいたものが風向きによって大量に打ち上がりました。
数百人が1〜2時間汗を流して拾えば、この海岸はきれいになります。しかし、ゴミが地球上からなくなったわけではなく、さっきまで海岸を汚していたゴミは袋に入って移動しただけです。美化運動であれば、掃除をすればそれでいいかもじれませんが、環境問題として考えるときは、発生源から考えて元を断ち、人間にとっての都合だけではなく、自然全体にとってゴミがどのようにインパクトを与えているのか、謙虚な気持ちで考えていくのが基本ではないかと思っています。
<スライド終わり>
まとめに入らせていただきたいと思います。
今回のシンポジウムは陸に原因がある海洋汚染について、総集編の6回目になるそうです。私たちも今年が「国際海洋年」でしたので、ふだんのゴミ拾いのキャンペーン以外にも、ずいぶん頑張っていろいろな勉強会やシンポジウムをしてきました。
海の問題は非常にたくさんあるにもかかわらず、我々はまわり中を海で囲まれた日本に暮らしているにもかかわらず、なかなか目が向かない面があります。そのことを私は昨年初冬のナホトカ号の重油事故のときに強く感じました。
あれほどの事故が起きて、結果的にはいろいろな方々が動いて、ボランティアもずいぶん貢献しました。しかし、「海を横につなぐネットワークは、こんなになかったのか」と、頭をガーンと殴られるような思いをいたしました。
分野毎にこれだけたくさんの方が意識を持って活動されていますから、ぜひ、今日のこの日の機会も「ああ、いい勉強になった」というだけではなく、継続的なつながりとして、それも何かあったときにすぐ立ち上がれるような緩やかつながりが作れる始まりの日になっていってほしいな、と強く希望します。このような気持ちを述べて、私の事例報告を終わらせていただきます。