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ここで一言お断りしておきますが、私どもは決して動物愛護のためだけにやっているのではありません。被害にあった生きものたちの姿を借りて、我々愚かな消費生活が自分たちの目先のことしか考えない果てにこのような現実がある、とお知らせするためにこのようなスライドを見ていただいてます。

海でゴミをカウントして調べてみると、その内の7〜8割は川や水路を通じて上流から流れてきていることがすでにわかっています。

材質別に調べると、今問題になっているプラスチックに代表される石油製品、時間が経っても自然にかえらず、何年も何年もそこを汚染し続けるものが圧倒的に多いことが数字的に明らかになっています。このようなものをひとつずつ拾いながら個数としてカウントします。そして、その結果を持ち寄って、何がゴミの原因になっているのか、景観を汚したり動物を傷つけているものが何なのか、解きほぐし、みんなで一緒に対策を立てようとしています。

今見ていただいた写真は普段私たちが生活の中でよく目にする動物ばかりではありません。ですから、皆さんの中にはもしかすると遠い世界の話だ、自分とは直接関係ないのではないか、と思われた方もいるかもしれません。でも、実はそうではありません。

宇根さんのお話で、田んぼから出る水が海の魚を汚している、そこに示唆や気づきがあったということでした。ゴミはもっと目に見えてはっきりしています。私たちが捨てたゴミがあのようにひどい状態を引き起こしています。

ここ1〜2年、日本でも非常に話題になっている「環境ホルモン」と呼ばれる内分泌撹乱化学物質の問題があります。海に漂うたくさんのゴミの中にも疑わしい物質が入っているのではないか。その実態調査・解明はまだほとんど着手されていません。

このように、単なるゴミといって「掃除をすればそれでいいのではないか」とか「捨てさせないしつけをすればそれでいいではないか」という時代は、はるか昔のことになってしまいました。

そういうゴミを出さない仕組みを考え、捨てられた後も自然環境への負荷が少ないような品物・材質を選んでいくことが緊急課題になっています。

先程、アザラシの口に輪っかがはまっていましたが、あのような生きものは、とても好奇心が強いため、異物があるとわざわざ近くを泳いだりするそうです。その結果、あのようなことがたくさん起こっています。

<以下、スライド併用>

 

これは、一般の方が気軽に捨てるゴミとは違いますが、破れて捨てられた漁網が首の周りに絡んでしまったキタオットセイの子どもです。

ここで材質のことを考えていただきたいのですが、漁網などは昔は木綿や麻の天然の素材でした。今はナイロンなどの丈夫で加工しやすく、値段も安い化学繊維でできています。ですから、捨てられた漁網は破れたままいつまでも海の中を漂って、ときにはこのように大型の海洋ほ乳類に絡んでしまいます。

生きものは、体に絡まる他にも、餌などと誤って飲み込んでしまうことがあります。

クロアシアホウドリという鳥が海面に浮かんでいるゴミをついばんでいる写真です。このゴミはたばこのフィルターです。日本で流通しているフィルターのほとんどは酢酸セルロースという化学繊維ですから、分解に非常に時間のかかる材質のものです。

死んだ海ガメのお腹の中にあったおびただしいプラスチックの破片です。海ガメは海草やヤドカリなどの底生生物など、種類によっていろいろなものを食べるそうですが、ヤドカリを食べるカメにはプラスチックの破片もヤドカリも見分けがつきません。

死んだイルカの胃を解剖したところです。胃の中にはびっしりとビニールやポリ袋の破片が詰まっていました。このような石油製品を誤って飲み込むとほとんど消化せず、排出もされにくい。ひとつ食べてそれが猛毒ですぐ死んでしまうようなことがないにしても、長年異物がお腹にたまって、これぐらいぎっしり詰まっていると満腹感があるために自然の餌をとれなくなり、餓死すると言われています。

ポリ袋をのどに詰まらせて死んでいるカメです。海ガメ研究家の発表では、海ガメの死因の6〜7割はポリ袋などをくらげと誤って飲み込むことによる、という説もあるほどです。

 

 

 

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