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小島 あずさ

 

なぜそれをするかというと、拾ってそこでおしまいにすると結局ゴミの原因はそのままになるので、時間が経てばまたどこかからゴミが発生します。拾っても拾ってもキリのないイタチごつこです。

ゴミ問題は、ただ美観を損ねるとか、ゴミが臭いとか、処理に費用がかかるといった人間の都合だけではなく、今、特に海にあっては、生態系を脅かす深刻なインパクトを与える問題になっています。それを根本から変えていくためにはただ拾うだけでは間に合わない、という状況があります。

そこで、私たちだけではなく、世界中で同じ思いを持つ人たちが心をひとつにして、同じやり方で、自分たちの周りの海や川や町にはどんなものが落ちているのか、海や川の汚れがどうなっているのか、それがどこから来ているのかを拾いながら調べ、その結果を「では、こういうゴミを出さないためにはどういう仕組みを作ればいいのか。子どもたちの教育はどうすればいいのか」という検討の材料にしています。このような活動をしています。

さっそくスライドを見ていただきたいと思います。

<以下、スライド併用>

我々の暮らしている町中や水辺でも、こういったゴミが落ちている風景はおなじみになってしまいましたが、今ここで見ていただいているのは、無人島で写した写真です。アメリカの一緒に活動している団体からお借りした写真です。

だれも住んでいません。海水浴やサーフィンをしに来る人もいないような海岸ですが、我々が出したゴミでこんなに汚されてしまいました。

これも同じで、ゴミ箱を開けた写真ではなく、どこかからゴミが海流に乗って打ち上げられ、風に吹き寄せられてこのような様子を呈しています。今では地球上にゴミが落ちていないところはほとんどないくらい汚れています。ここで皆さんに考えていただきたいのですが、この地球上ではたくさんの生きものが生きています。しかし、自然の循環に乗らないゴミを出しているのは、私たち人間だけです。

では、海のゴミがなぜそんなに問題なのか?

ひとつには、大量消費の生活の果てにゴミの量が莫大になってしまったことがあります。

今とても困っているのはプラスチック・ゴミの問題です。なぜなら、プラスチックは腐らず、なかなか自然に分解されないものだからです。

シックスパックリングと呼ばれる缶ジュースなどを6本ずつ束ねるホルダーです。日本でもディスカウントストアーの安売りビールや清涼飲料水にこの口金が付いていて、皆さんもご覧になることが多いと思います。アメリカでは日本よりもたくさん使われていて、ゴミとしてとても困った存在だそうです。

何気なく捨てられたシックスパックリングが水の中を漂っていて、悲しいことに偶然体がはまってしまった魚です。これをくっつけたまま、だんだん魚は大きくなり、ゴミは一緒に成長しないで、リングのために体が切れてしまいました。

この鳥も頭のところにシックスパックリングの切れはしをくっつけたまま動き回っています。

これはもう少し大きな生きものですが、ハワイとカリブ海の周辺で今1500頭ぐらいしか生き残っていない、絶滅が非常に心配されているハワイアンモンクシールというアザラシです。

口のところにプラスチックのリング状のゴミがすっぽりはまってしまいました。こうなると、人間のように手がないので、自分で外すことはできません。そして、こうなれば、餌をとることもできませんので、かわいそうなことに、見付けられたときは死んでいました。<スライド終わり>

このように、我々が使って何気なく捨てたゴミが、生活の中できちんと処理されていれば問題はありませんが、いろいろなところから最終的に海にどんどんたまっています。そして、見えないところで野生の生きものたちを傷つけています。

 

 

 

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