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基調講演 「日本の自然管理〜伝統と現状〜」

ケビン・ショート(ナチュラリスト/文化人類学博士)

 

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ケビン・ショート

 

こんにちは。ショート・ケビンと申します。「ケビン」と呼んでください。ケビン・コスナーと同じケビンです。よく似ていると言われます。(笑)

僕はアメリカ人です。でも、日本に来て25〜26年経っています。しっかり日本の生活になじみ、納豆も食べるようになりました。

でも、最初は日本に行きたいから日本に来たわけではないのです。実は兵隊で日本に来ました。当時のアメリカは、ベトナム戦争を起こし、徴兵制度がありました。今、アメリカは日本と同じで、兵隊は全部志願です。つまり、兵隊に入りたいなら入ってもいい、ということです。でも、僕の若い頃は、兵隊に入りたくなくても入りたくても入る、という徴兵制度がありました。

僕はニューヨークの下町で生まれましたが、毎年夏休み3ヶ月はニューヨークの近くのニュージャージー州のカントリーサイド、田舎で過ごしました。僕は幼い頃からとにかく自然や生き物、動物が好きでした。地球の探検家になりたいという夢がありました。ダーウィンなどの19世紀の探険黄金時代の探検家にあこがれていました。

でも、高校を出て大学に入りましたが、あまり勉強は好きではなかったのです。アメリカの大学は入りやすいが、いったん入ると勉強をしないとすぐ落とされてしまうのです。僕もやはり勉強をしないで大学から追い出されました。そして、兵隊として日本に来ました。別に、日本に行くように希望しませんでしたが、すごくいいな、と思いました。それはなぜかというと、ベトナムではないところだったからで、戦争に行きたくなかったのです。

そのころはまだ、探検家になりたいという夢をずっと持ち続けていました。しかし、その探険の夢は、日本で実現できるとは全然思っていませんでした。

軍隊から「これからおまえは日本に行きなさい」という一通の手紙が来ました。それ以前には、日本に行きたいとは全然思いませんでした。どちらかといえば、アフリカとかアラスカとかアマゾンなどの世界の大自然、原生自然がいっぱい残っているところに行きたいと思いました。正直に言えば、日本には自然があると思っていませんでした。当時、日本についての正確な情報は、アメリカにはほとんどなかったのです。

僕自身の初めての日本についての印象は、子どものころに見た映画から来たと思います。ゴジラとかモスラなどの1950年代の怪獣映画が全部アメリカに来ていて、子どもの頃にそれを見て、映画に描かれていた日本のイメージしかなかったのです。ゴミゴミした、こみあっているところで、ときどき大きな怪獣が街中を壊したりする。

 

 

 

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