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【藤井】すみません、私も。2分でやめます。

今のご質問は、経済活動とダイナミックにからめて考えられないかというご質問だったと思うのです。

先程、田中さんの中から、分散型にいろいろなシステムを変えていけという話がありましたが、まさに琵琶湖で私たちがこのややこしい環境の専門生協を作ったのは、一元化された流域下水道で、全国一律で、本当にいいのか。そこに対して対案として、個人下水道の提案をするというかたちで、地域に見合った、地域の分散型のかたちを提案したつもりです。

それから、ダムに対しては、ダムの貯水量にはとても見合うものではないわけですが、「一軒一軒がダムになろうよ」ということで、雨水の貯留のシステムを提案してきていて、一番大きい家では20トンの雨水貯留槽を作ったお宅まであるのです。そういう一人一人がダムになる。

それから、エネルギーで言えば、原発、化石燃料に頼るだけではなくて、クリーンエネルギーを含めて地域のバイオマスなど、エネルギーも分散化すれば、多様なエネルギー構造にできるのではないかということで、今、ソーラーとか風力、バイオマスなどの組合せを考えているのです。

たぶんゼネコンも今までの20世紀の土木工学ではなくて、地域分散型の、それに非常に適応したかたちの提案を、もっともっとダイナミックに出していけば、逆にそれは日本の21世紀に向けてのインフラとして生きてくるのではないかと思います。それが、今までの20世紀思考の中のインフラ提案でしかないので、公共事業というと、「ああ、またあれね」となってしまうのです。

そこは分散型の、地域自立型のインフラを作るためにはどうしたらいいかという方向で、ぜひ専門家もお知恵を出していただきたいし、それを見せていただきたいと思います。

 

【田中】では、私は意見をひるがえして、「巨大ダム賛成で一度やってみないか」という、ちょっと理屈をこねてみましょう。

今の会場からのご質問の方は、ダムというのは今、必要水量ぎりぎりいっぱいにためているので、例えばその必要水量というのが1だとしたら、10倍くらいためる巨大ダムを造って、そしてそれを農業用水にも生活用水にも、あるいは魚のすむ空間を作るためにも計画的に流していこうということですね。おもしろいかもしれませんね。ただし、あちこちでやらないで1ヶ所で、モデルケースとしてその流域住民が賛成したら、どこかでやってみる価値は僕はあると思います。

ただそのときに、そのダムが引き起こすさまざまな影響を明らかにしてから行ってほしい。これはおそらく琵琶湖総合開発でも一緒です。確かに必要な量よりもたくさんあったら、計画的に流せます。ただ、川の生物からいうと、川というのは実はダムを造ったら、水量が安定したら、実はだめなのです。水が安定したら、魚にとっていいではないかというと、そうではないのです。

洪水が起こることによって、川の底質というものはガチャガチャと壊されます。そのときにすき間ができる。そして、川の淵と瀬にかけての伏流水と表流水の交流、あるいは蛇行点の表流水と伏流水の交互の交換があって、川というのは目詰まりを起こさずに様々な生物がすんでいるわけです。安定させたらだめです。ある程度かく乱を起こさなくてはいけない。

もうひとつ、先程の土砂の問題があります。ダムをつくることによって、水というのはある程度制御できるかもしれません。ただ、今、ダムをつくっている人は困っていますが、水は制したけれども土砂の制御はできていないと先程、鷲尾さんからもありましたが、海のある魚の生息場所の砂場が海からなくなる。海砂の出所というのは川ですから、それによって魚もいなくなるでしょうし、明石の海の白砂もなくなってしまう。

 

 

 

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