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【藤井】今年、環境庁の中央環境審議会のヒアリングの仕事で熊本へ行って、この状況をよく見てきました。行政がきちんと雨水浸透を施策として予算化しているかどうかという問題だと思います。

そういう意味でいうと、東京の墨田区を中心に、東京都の合流式の下水道の地域では雨水を逃すという、できるだけ下水道に入れないという、言ってみたらやむにやまれぬ中から出てきた政策のところ。

それから、熊本では地下水が非常に減っていて、地下水に頼って全部上水をまかなってきたため、非常に深刻な状況になっています。それで、地下水を何とか涵養するため、地下水の浸透冊枡とかを設置するために行政が補助金をつけているケース。

それからもうひとつ、都市型の中でおもしろいケースは、埼玉県の越谷市というところにあります。ここは公共下水道がどんどん延びているところです。公共下水道ができるまでその周辺のお宅はくみ取りのトイレに住んでいた方は少なくて、ほとんどが単独浄化槽と呼ばれるし尿だけを処理する浄化槽をつけているお宅でした。公共下水道につないだあと、その単独浄化槽のタンクをゴミにせず、埋め戻しもせずに、雨水をためて散水に使ったり、洗車に使ったり、うまくすればトイレの流し水に使ったりという政策のために、今から数年くらい前から毎年何千基という補助金をつけています。

その3つの典型的なケースがあります。私もそのケースを見ながら、何とか近畿圏でもそういうことができないかと動いていますが、滋賀県を含め行政施策に乗せているところはまだ見えません。琵琶湖の水はずっと安定してある、琵琶湖の、水の量については心配ないということなのかな、と非常に残念なのですが、もしそうだとしても、私たちはもっと雨水をどう利用していくかということに目を向けなければいけないと思う。とてもいい質問だと思います。

 

【田中】答えていただきましたが、君塚さん、これでよろしいでしょうか。

 

【鷲尾】琵琶湖の水をもう少し高くしたらどうですかね。ペットボトルの水よりも高くするとかね。

 

【片寄】今の、言ってみればクローズドシステムできるだけひとつのところから下流の方に迷惑をかけない形で水をリチャージして、戻していって、そして使った水をきれいにして流していくというようないろいろな施策が必要だと思います。

近畿圏ではそういう意味での先進的な例というのが今のところあまりないというお話がありましたが、このようなことをやっているというお話が会場でありましたら、どなたか聞かせていただけませんか?

東大阪あたりは地下水の問題を相当昔からやってきたと思いますし、今の西宮の宮水というのも大変な問題を抱えているだろうと思うのですが…。

 

では、田中さん、もう1点。

「魚のすむ川にするためにはかなり水が必要だということはよくわかりますが、田んぼに水が要る夏の渇水期に水を切れないようにするためには、農業とどのように折り合いをつけたらよろしいのですか?」

 

【田中】むだづかいをしないことだと思いますが、おそらく今の農業というのは用排水に関してパイプライン化して、並列的に用水の方と排水の方を分離しています。だから、それぞれの田んぼというのが、それぞれ1回使ったきりでそのまま川の方へ流れてしまう。個人個人の農業者にとっては非常に便利にできているのですが、全体の水の使い方として非常にむだに使っているのではないでしょうか。

そのようにすることによって何か農業の方では、酒井さん、問題が出ますでしょうか?水を大切に使う農業、このようなものはどうかというアイデアはありませんか?

 

【酒井】いわゆる日本農業が世界のレベルに追いつくためには大型化、省力化しなければならない。そのためには田んぼを四角くしよう、大きくしようというのが農業構造改善事業です。

この事業の特色といいますか、水の使い方は用水路と排水路をはっきり区別して、一度使った水は全部排水路に落とされるのです。貴重な水の使い捨ての考え方なのです。昔は落差を利用して、水は何回も何回も使われて、イネを養い、その水の流れる過程にはあふれるばかりの魚や水生昆虫たちがいたものです。基盤整備事業に現場の農民の声が反映されていないことに悔しい思いをしております。

 

 

 

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