ところが今、複雑な環境ホルモンの問題が起きてしまって、手をこまねいています。京都大学の先生たちの実験データをいろいろいただいているのですが、いわゆる女性ホルモンと同じような働きをすると言われる環境系のホルモンと、自然系のホルモン。それが琵琶湖の水に対してどのぐらいの割合で見られるか、京都大学の先生たちがずっと実験データを集めています。この前うかがいましたら、なんと自然系が1割で環境系が9割だというので、私たちの琵琶湖の周りでの暮らし方そのものをかなり徹底的に見直さなければ大変だ、という思いでいます。
これは琵琶湖だけの問題ではないのですが、たまたま琵琶湖は460本も川が注いでいて、そして、閉鎖水域です。湖の水が全部替わるのに19年ぐらいかかると言われていますから、湖の周りに住む人たちの暮らし、これは農業の場面も工業の場面もすべて含んでという意味ですが、それを全部集めている。全部が見えるわけです。ですから、私たちのライフスタイルを全部チェックするために、今どういう状況かということをそこが示してくれるわけです。
大変恐ろしい状況の中で、「さて、何をするか」というと、これは具体的な行動プログラムをたてる以外にないです。かつて合成洗剤のメーカに有リン合成洗剤に「ノー」を言わせた県ですから、何かできるのではないかというので、今少し動きを始めているのですが、まだ大きなうねりにはなっていません。
そこで、これはぜひ琵琶湖、淀川、瀬戸内の水系の中でもできるといいな、と思っていることがあります。たまたま私は下水文化、下水処理および下水に関わってきた方たちの研究会に参加したとき、アメリカ・ケンタッキー州の非常におもしろい例を聞きました。それで、「よし、これをやってみよう」ということで、今、少し動きはじめているのです。 私たち日本が全然やってきていなかったことが、アメリカのルイビルという小さなまちで行なわれています。つまり、どういうことかというと、私たちの暮らしの中には環境ホルモンと言われている70種類以外にも、非常にたくさんの化学物質が取り込まれています。そして、取り込まれているだけではなく、私の家でさえどこに持っていっていいかわからず物置に並べているものがたくさんあります。置くところがない場合、たぶんゴミとして放り込まれる。いずれにしても非常に具合の悪いもの。もちろん水に流されてしまえば、下水処理場も浄水処理場も全部素通りですから、人間の口に入るか、海の生き物に影響してしまうのです。
ルイビルのまちはなんとすばらしいことに、1992年のアースデー(4月22日)に、ルイビルのまちに住んでいる人たちの家庭で眠っている化学物質、例えば、欧米はよくペンキ塗りをしますが、そのたまっているペンキとそれに関わるもの、それから家庭で使われている洗浄洗剤、殺虫剤、それから農薬にかかわるもの、それから車(車にも随分化学物質に関わるものがある)、その4種類について、各家庭にあるであろうものの一覧表を届けたのです。
届けてあるだけではなくて、そこに対案が書いてあるのです。「オルタナティブズ」いう欄があって、「今、皆さんはこんな殺虫剤を使っているけれども、こんな方法もありますよ」というのを市民に伝える。
それだけではなく、きっと残ってしまっているものがあるだろう、と市が1992年の4月に「残ってしまっているものをみんな集めてください」と呼びかけ、それを(ボランティアが非常に多かったようですが)市民と行政、それから専門家、メーカーというメンバーが集まって、仕分けし、再利用する場合には持って帰る。最終的にはメーカーが責任をもって持って帰るという仕組みづくりをしたのです。
1回目ですからそんなに関心がなかろうと思ったようですが、118トンも出たそうです。1回のイベントで終わらせようと思ったけれども終わらなくて、毎年毎年やって今に至っているというお話を聞いたとき、日本でどれだけの化学物質が地域に捨てられているか、予想がついてそら恐ろしくなりました。
滋賀県でいうと、琵琶湖に注いでいる川、これは最終的には皆さんの口に入る水にもつながるわけですが、愛知川という大きな川があります。その愛知川の川辺林を、八日市という町が保全をするために、町のみんながそこの掃除に出かけました。川の近辺には、釣り人が置いていった釣り針とか釣り糸などがたくさん残っていますが、川辺林の中に一般のゴミと同時に、随分たくさんの得体の知れないものがあるのです。そこの地域の人たちは分別回収をしていますから、「ビン、缶、その他のもの、と分別して出しなさい」という宿題をもらっていて、ボランティアは川の川辺林に入っていきました。