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【大谷】愛媛大学で何とかしてくれということではないのですが…。

 

【柳】愛媛大学では分析技術も進んでいますし、北極から南極までのいろいろなサンプルの集積もしていますから、世界の中心にはなると思います。いずれは研究センター化して世界のメッカになって愛媛から世界に環境ホルモンのいろいろな情報を発信するような機能を果たしてくれることを期待しています。それは愛媛大学としての重要な役割ですが、世界全体の環境ホルモン問題としては、何らかの有効な別の枠組みを提案するようにしてもらいたい。

 

【大谷】それではここでパネラーに訴えたいことを1、2点出していただいて、そのあと会場との意見交換にしたいと思います。阿部さんからどうですか。

 

【阿部】環境ホルモンで、海の生物との関連で言われているひとつに、貝類の種の存続の危機があります。雄が雌化していると言われてきています。

かなりたくさんの島々でアサリがとれなくなったと言います。愛媛県では弓削島や大島、東予市で天然のアサリはずっと前からとれなくなっています。私も行っていた、稚貝をばらまいて育てて500円払って掘らせるところは、4〜5年前にやめてしまいました。貝が育たない、大きくならなくて食べられないという話が瀬戸内各地にあります。

陸地から流れ込む川などを伝って海に流れ込む微量の汚染物質の影響、環境ホルモンの影響もあるかと思います。今月の愛媛新聞でも水田にダイオキシンが流れ込んで河川でダイオキシンがずいぶん出たとか、今日の新聞でも環境ホルモンが6〜7種類愛媛県内の川から出たと報告されています。すべての水は低いところ、つまり海にたまるわけです。一番沿岸にいる貝類に影響が出るとしたら、そういうことではないかと思います。これは想像の域を出ませんが、解明されるのを待っていたら私たちの命の存続きえも危ぶまれると思うのです。

私たちはこれからやろうと皆さんに呼びかけるところなのですが、カメノテという貝をご存じでしょうか。写真をお回ししますが、カメノテのような貝でタカノツメともいう貝です。これは瀬戸内海全域にかなリー般的にどこにでもいたものです。

この貝の生息調査を瀬戸内海の何百ヶ所の地点で調査を行いたいと思っています。海の汚れの指標といいますか、ただこのカメの手は先ほどの上黒島周辺にはまだ残っていますのでカメの手一種類だけで汚染の指標にはならないと思っていますが、カメの手や岩ガキは潮が引いたときに行かなくても満潮のときでも岩場の上の方に住んでいる貝なのです。ですから、皆さんも海に行かれたときにこのカメの手がどのくらい残っている方、ということをひとつの指標にしてください。あるいは岩ガキがどのぐらい残っているかということを瀬戸内海の数百ヶ所で、来年の1年かけて調べてみたいと思っています。

すでに20ヶ所ぐらい調べた方がいます。広島県にお住まいの脇山功さんという写真家で、各地で写真を撮りに回っておられます。「大変昔どおりにいる」、「多くいる」、「少しいる」、「ほんの少しいる」、「いない」という地図を作っています。これをもとに瀬戸内海周辺の誰でもわかる海の状況の統計的なものを出す活動を来年1年かけてしてみたいと思っています。ご協力いただける方がいらっしゃいましたら、後で申し出ていただければうれしいと思います。

 

【大谷】葭川さん、カキの暗い話が多かったのですが、明るい話もあれば紹介していただいて…。

 

【葭川】明るい話といったら、ここ3〜4年前ぐらいから後継者問題が結構深刻でしたが、世間が不況になってカキ屋に息子が帰ってきた。継ぐ人間が増えてきたので、が一時期かなり深刻だった後継者問題が今みごとにクリアになった。それだけです。

 

【大谷】カキ養殖の後継者ということですか。

 

【霞川】カキ養殖だけではなくて漁業全般です。

 

【大谷】決して見通しは暗くないということで、漁師をしてみようかということになったのですかね、若い人は。それともこの不況で・・・。

 

 

 

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