環境創造というのは、陸地で仕事がなくなった土建屋さんが大変喜ばれる、土建業が悪いわけでは決してありませんが、十分確立していない技術でもって環境創造するということは、私はますます環境を破壊するものだと思うわけです。
そして今言われましたように、10月の初めに審議会は環境庁に出す答申案を骨子としてまとめました。その骨子は、国民であれば、だれでも環境庁にお願いすれば送ってくれます。そんなにたくさんのものではありませんから、送り先もすぐわかりますから送っていただきまして取り寄せていただきたいと思います。私はそれを見まして、やはりこれでは実効力がない。瀬戸内法も埋め立てを抑制するということを書きながらしりぬけをしている。やはり埋め立てはいけない、砂利採取はいけない、廃棄物の持ち込みはいけないということをきちんと書いてほしい。特に首都県からゴミが運ばれています広島県の上黒島に、ここに報告がありますが周辺の生物が非常に減っています。瀬戸内全域で減っていますが、上流に廃棄物のある川から流れ出たところの生物がたくさん死んでいますし、廃棄物の埋め立ての周辺の生物の層が薄くなっているという報告があるのです。こういうことを考えますと、今環境庁が出している答申案、骨子というものは非常に生ぬるいし、答申案の骨子は瀬戸内法を変えようというものではなくて、その運用基準、方針を手直しするという答申をしています。そういうものをいくら変えても実効力がない。どうしても通産省、建設省からの圧力を受けてしまうとなると瀬戸内法の中に埋め立てはしない、廃棄物を持ち込まない、海砂の採取をしないという3本柱をきちんとうたってほしいというのが、私たち瀬戸内住民65団体の意見として環境庁に挙げている意見です。
【大谷】愛媛県でも2年ぐらい前でしたか、梅津寺を埋め立てて、そのかわりに沖合に人工で砂浜を作るから埋め立ててもいいではないか。現在の梅津寺海水浴場は海水浴にあまり適しなくなっているという計画が出されました。それでかなり県内からも反対が出た。決定打が環境庁にだめだと言われたこともあったのですが、行政の側はそのようにして目先を変えていくというやり方を最近しているのではないかと思います。
【阿部】中国新聞の山城さんがいらっしゃいますので、広島県が海砂の採取をやめましたけれども、中国新聞は非常に分厚い取材をなさっているところでして、砂利をとったら海がどういう状態になるか、お聞きしたいのですが。
【大谷】それで行政に関して私もそこへ行きたかったのですが、瀬戸内海という1つの海域でありながら面している各自治体によってすることがばらばらである。特に海砂はその典型ではないかと思うのですが、広島県は禁止になる。これもまだ汚職がわかってこれはいけないということで、最終的にはそれが決定打になったようです。愛媛県では総量規制ということですが、そのあたりで阿部さんも言われましたが、実感といいますか、山城さんは愛媛県も何回も来られて取材しておられます。そういうことを聞かせていただきたいと思います。
【山城】海砂に関しては何人かでしていまして、私もそのグループではないのですが間接的にいろいろと取材などをしてきました。おっしゃるように広島の場合、ある漁協の組合長に海砂を採取するための業者が50万円を持っていって、それを突き返すというところが端緒になりまして、海砂をめぐる非常にどす黒い構図が暴かれる中で問題を大きく広げることができて、最終的に海砂採取禁止に追い込むことができました。
海砂採取の問題で広島県内の漁業者の話を聞いて非常に印象的だったのは、本気で漁業をしているところの漁業者の皆さんは「あんなことをしていいことにならないのはわかりきっている、一刻も早くやめさせなければいけない」とみんなおっしゃるのですが、あまりそうでないようなところの漁業者が、それを認めてしまっているという構図なのです。漁業者の中でも、海を汚したり海をだめにしたりすることに対して歯止めになるような、本当の意味で真剣に漁業活動をしている人はおられます。