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海があれば、いくらでも受け入れれば、陸で生活している人は海に持っていけばいいということでこの生活を続けるでしょう。陸の環境がよくなっても、海がこういう形になったのでは何もならないと思います。海に負荷を押しつけるような瀬戸内法のあり方を問い直したい。私たちは環境庁に対して瀬戸内法の改正をしてほしいという要求を出して、私も今年の秋2回環境庁にまいりました。海砂の採取をやめてほしい、埋め立てをやめてほしい、瀬戸内海に廃棄物を持ち込まないでほしいと要望してきました。

『住民の見た瀬戸内海』には、環境庁に持っていった35のレポートがあります。瀬戸内各地35の地点から私たちの海がこんなになりました、と瀬戸内法の改正を求めるために作った冊子です。1000円ですのでぜひ買っていただきたいと思います。この中に会の顧問の藤岡義隆さんという、呉に住んでおられる元中学校の先生がいます。

30年間中学校の子どもたちと一緒に海の生物の生態変化を調べています。環境庁はCOD、BODが、水質がよくなったと、瀬戸内法制定以来の成果を言われます。私たちもやもすると「そうかな」と思ってしまうわけですが、この生物調査を見てみますと、30年間に何ヶ所で調査をしているのですが、85種類いた生物が20種類になっている。カキや真珠の貝などお金になる生き物は統計がたくさんあるわけです。赤潮被害にしても養殖に影響が出たとかいうことになれば、統計はしっかりとあります。しかし、瀬戸内海の中で、カニや小さな貝など生物の種類の調査をした統計は、藤岡さんのただ一種類だけだと言われています。これは呉の周辺の海域ですので、比較的汚れた海域と言っていいとは思います。私は瀬戸内海全体にこういう傾向があると思っています。瀬戸内の運動をしていますので各地に行きますが、アサリ掘りが各島で、その風景を失った。この10年間、ほとんどのところがそれを失ったと思っています。また詳しくはあとで申し上げたいと思います。

 

【大谷】言いたいことが非常にたくさんあるようですが、またあとでお願いします。

毎日海に出て仕事をしている葭川さん。若手のカキ養殖家です。愛媛でも広島カキはこれからがシーズンですが、生産者として瀬戸内あるいは広島湾がどう変わっているかお話しいただきたいと思います。

 

【葭川】広島から来ました葭川(よしかわ)といいます。しゃべってくれと言われて、いろいろと考えてきたのですが、中国新聞の方が大方しゃべってしまいました。しゃべることがあまりなくなったので、植林について少ししゃべらせてもらいます。

植林活動を今は年に2回、広島市と広島県で行っております。3月と10月にしていますが、植林活動を始めたのは、10年前と比べて海そのものを育てる力がなくなってきた、そういうことがものすごく目につくようになったのです。それで何かを始めよう、植林をしてみようという話になりました。

最初は広島市の水産課に問い合わせて、広島市の森林組合を紹介してもらい、そこに直接掛け合って土地を提供してもらって植えるという形をとったのです。植林組合の方といろいろ話をしたら「後継者がいない。山も今木を切ってもお金にならない。でも置いておけばどうにか金になるかな」ということでした。提供してもらった土地は松食い虫被害で松枯れが起きて、どうにもならなくなった松を切ってそこに植えてくれということで始めたのです。

最初は広葉樹を植えたいというのが希望だったのですが、相手はなるべくお金になるスギを植えてくれと。妥協の線で1800本を植える中の180本、10分の1をケヤキ、クリ、山桜、ほとんど山桜ですが、それを持っていって植えました。あとの管理はほとんどその土地の人に任せて、3年くらい経って見にいったらスギしか残っていないという状況でした。

県の方は、完全に県の方が土地を買い取ってくれて、太田川水系の上流の方に用意してくれた土地に漁業者が木を植えにいく。行って植えるだけです。

山に木を植えてすぐどうにかなるというつもりはないのですが、とにかく漁業者がこれだけ真剣に考えていることを皆さんに見てほしいと思います。

自分たちで今勉強会をすごくしているのですが、その最中にいろいろなことを聞くのです。広島は下水道の完備が下から数えた方が早い。他県へ行って海を見たときに、海が違います。広島湾は本当に出口が小さい。それで川が多いから、餌がよくわく。

 

 

 

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