こちらが五日市人工干潟に飛来してきている鳥の数の推移です。1991年にできた当初は多かったのですが、傾向としてだんだん右肩下がりになってきています。これは干潟自身の面積がだんだん減ってきているということが影響していると思われます。
これは岩国のアマモ場です。岩国基地の沖合にありまして、魚介類や野鳥などにとって海のゆりかごと言っていいものです。これは1年間で最も潮が引く大潮の時期に撮影したものです。非常に美しい藻場です。ですが、この岩国基地の沖合のここは、沖合が埋め立てられることによって41haの藻場が消えます。これは移植することになっていますが、まだどこにどのくらい移植するかも含めてまだ明らかになっていません。そしてこのアマモ移植に先行して広島の出島沖埋め立て、これは現在も埋め立てが進んでいますが、ここはもうすでに2.2haのアマモ場が埋め立てられて、その代償的な措置として広島県などがアマモを広島湾の3ヶ所に移植しています。
アマモがどのくらいついたかというと、芳しくありません。最初のうちはいいのですが、だんだん下がってきています。アマモも生えるべくところに生えているわけで、新たに移植した場合、いろいろな潮流等の影響もあって根づくのが難しい。このアマモ場には非常にお金がかかっていまして、5年間で20億円を投入してこの3ヶ所に植え、その後のメンテナンスもしているのです。それでもとの状況です。
瀬戸内海の藻場面積は2万2000haありましたが、今は6300haと3割以下に落ちています。
■瀬戸内海について知る
今回の瀬戸内海の取材を通じて感じたのは、瀬戸内海についてどこでどのような問題が起きているか知ろうとしても、なかなかそういう場がないということです。学校教育の中でも瀬戸内海についてはほとんど教えられていません。広島県内を調査したところ、小学校5年生の教科書に閉鎖性水域に近い単元がありましたが、そこで取り上げているのは完全な閉鎖性水域の琵琶湖でした。瀬戸内海はいくつかの教科書を見ても全く記述がありませんでした。
瀬戸内海は完全に閉鎖されたところではなくて、多少流動性もあるという難しさもあるでしょうが、包括的な瀬戸内海研究が世の中の多くの人にわかりやすい形で示されていないのではないかと思います。
学校の環境教育も最近は盛んになってきています。地球環境についてはいろいろ教えられているようですが、より身近な環境である瀬戸内海についてはなかなか教えられていない。瀬戸内海についての教材等を作っていくことも大切ではないでしょうか。
■海のために今から私たちができる7ヶ条
最後に、私どもが作った「環境家計簿」の中で「海のために今から私たちができる7ヶ条」があります。
海のために今から私たちができる7ヶ条
[1] 水を大切に使おう
[2] 水を汚さないようにしよう
[3] ゴミを減らそう
[4] 化学物質に注意しよう
[5] 海をもっと知ろう
[6] 海の教材化を進めよう
[7] 行政・企業へ働きかけよう
[1] 水を大切に使えば、ダムをつくらずに済む。
[2] 水をきれいに使えば、富栄養化、貧酸素水塊の発生を抑えることができるのではないか。
[3] ゴミを減らせば、ゴミを埋め立てる必要も今よりは減ってくるのではないか。
[4] 私たちは化学物質を処理する力がないのに、化学物質をどんどん使っている。そのツケがダイオキシンあるいは有機スズの問題等で出てきている。これももっと注意が必要ではないか。
[5]・[6] 私たちは海のことにあまりにも無関心だった。海をもっと知って、教材化を進めていこう。
[7] 私たちのいろいろな思いを行政なり企業なりに働きかけて、世の中の仕組みを変えていかなければ、瀬戸内海を後世にきれいなまま、あるいはもっといい形で伝えていくことはできないのではなかろうか。