体中で感動するとか、「痛かった」とか、「きれいだったなあ」とか「すごかったあ」とか。稲刈りして、体がガタガタになるくらい、次の日は立てなくなるくらい疲れたとか。体中でブルブル感じるような感動とか。そういう体感をすることがものすごく大事なのだろうと思います。
体中で何が大事なのか、今どうなっているのか、そのことを感じることです。それは何歳になっても遅くないと思うのです。子どもたちにと言う前に、まず自分たちもそれを体験して、それを伝えていく。「去年、お母さん稲刈りして、ものすごくおもしろかった」みたいに、そういうことをどんな立場の人でも経験して、それを友達に、職場の人に、あるいはもちろん子どもたちに伝えていく。それが伝えるということの意味ですし、これからの世代というか、未来を作っていくことになるのではないかと思います。 体験するということは、すごく古くさいかもしれません。メディアがいろいろ発達していますし、でも、そのあたりまえのことというか原点というか、そういうことがものすごく大事なときなのではないかと思います。
【米山】高崎先生、石巻で先生が中心になって、水質の改善とかいろいろなことを行政と一緒になってやっていらっしゃるようですが、これからの取り組み、見通しみたいなものは何か一言ありませんか。
【高崎】今、大葉さんもお話しされたのですが、一番ベースになるのは個人の気持ちでしょうか。一人一人の向いていく方向だと思うのです。
私たちが自分のお金で食料を買ったり、何かオモチャを買ったりするのとは違って、公共事業でないとある程度できないというのも事実だと思うのです。環境「保全」という言葉を使いますが、私は「修復」という言葉もとても大事だと思うのです。というのは、川だけではまかなえないほどのバランスの崩れがあるとすれば、それはやはり「修復」していかなければいけない。それは感情論ではなくて、きっちりと計算で出さなくてはいけない。それを推し進めていく力というのは、一人一人の「これで本当に大丈夫なんだろうか」という気持ちです。
それから、「安心」というキーワード。将来、これから先に向けての安心が、一人一人の気持ちが重なったところでないと、決して動かないのではないかと思うのです。
私たちのレベルで一人一人ができるのがひとつ。それとは別に、きっちりした根拠で考えて、例えば「山と川を守るだけでは、ここまではできる。これはできないだろう。ここから先は別の方法でないとできないだろう」そういうことをはっきりさせてもらいたい。そいうことも含めて、声を上げていくことも大切になっていくのではないかと思います。
【米山】木村先生は環境団体の連合体MELONの代表をしていらっしゃいますが、その活動などちょっとお話しいただけますか。
【木村】宮城県には(財)みやぎ・環境とくらし・ネットワーク(MELON)があり、私はその代表です。これは環境に関心のある人がネットワークをつくろうと始まったことです。自分たちだけではなく、子孫にまで十分伝えていくような地道な活動をしていこうと、財団法人まで作ったわけです。
今日は畠山さんから非常にいい話を聞きました。それは教科書に載るということです。
この前、北海道で地震のときに津波が来て、小学生と先生が流されましたね。それは我々が小学校のとき「稲村の火」と言われたものです。地震があって、坂の上に住んでいる庄屋さんが沖を見たら海の水が引っ込んでいくので、「これは大変だ」と稲穂を刈り取って火をつけたのです。村人は皆、庄屋さんの家が火事だ!と坂を上がってきて助かったという話が教科書にあったのです。いつの間にか教科書からなくなりましたが、「地震のあとには、もしかすると津波が来る」ということを、我々が子どものときには「稲村の火」で覚えたのです。
環境がどのように大切なのかというのを教科書に載せることは、環境を何とかしようとしている我々の活動にとっても非常にいいことです。私たちも教育を何とかしたいと考えているますが、これからこういうことをネットワークにして活動していきたいと考えています。
ちょっとつけ加えていいでしょうか。