今は外材に頼っていますが、日本の家は国産材が長持ちするし、住みやすいので、林業について考えていく必要がある。環境保全も大切ですが、きちんと生業となるように、それが一番大切だと思います。
大葉さんも言った、稲刈り体験。田んぼをこぐことを大人も子どももしない。稲を刈るよりも、まず田んぼをこぐだけで大変だった。土の感触とか、そういうことがまず大切かなと思います。
【米山】海につながる、陸の難しい問題がいろいろあるようです。
木村先生、食を通して、これから一番必要な取り組みについてお話しいただけますか。
【木村】日本は自分でつくらず、外からどんどん入れているので、食べたあとの糞尿は全部日本に留まるのです。どんどん世界から窒素やリンを入れて、輸出しない。大便を輸出したことはないのです。
オランダなどは、外から来る窒素やリンと出す窒素やリンを全部計算しています。バランスとろうとしています。日本の中で何とか生産を上げて、それを自分のところで処理しけば、循環できるのです。
インドネシアから帰る途中、隣に座った人が「この辺の下の森林は、全部日本のものですよ」と言い、びっくりしました。「そんなことはないでしょう」と言ったら、「いや、土地は買えないけれども、森林は買えるのです」と言うのです。日本人が家をつくるということは、外国の木を切って家を建てるということなのです。
人工衛星から見ると、ロシアの山火事の煙が東北地方の上に来ています。世界はものすごく狭くなっている。外から持ってきてどこかで使うということが、結果的にある地域の環境を破壊している。
そう考えると、作る・食べることを自分たちの中で何とかしていきたいという方針を政府がもっとちゃんと出すべきではないか。
【米山】日本の自然の循環が断ち切られている。非常に日本人の行動が問題になりそうです。
高崎先生、行政と一緒に海洋汚染絡みのお仕事などをしていらっしゃいますが、ケイ酸の問題とか、新しい海洋汚染の問題が出てきたようです。その辺をもう少し詳しくご指摘いただければと思います。
【高崎】ものができるには理由が必ずある、というのは皆さんよくおわかりとになると思うのです。
例えば、ブナの森がなぜ田んぼを、またカキを育てるかというお話。その中の「何が」という話になったとき、そこで初めてケイ酸、鉄ということが出てくるのです。田んぼも減反が進んで、わらを入れた有機肥料、堆肥をあまり使わなくなったこともあると思います。川から海に行くケイ酸は、地球上にたくさんある成分です。鉄やカルシウムもたくさんあります。それが海に行かなくなるとどうなるのか。
珪藻は好んで他のものが食べます。その珪藻ができなくなってしまう。珪藻ができなくなってしまうと、それに替わるタフなやつが出てくる。これが問題を起こすプランクトンで、様々な問題が出てくる。
ケイ酸の問題は足りないことであって、それを足りるようにすることと汚染として問題なものは、2つに分けなくてはいけない。
汚染として問題になるようなものは、かなり研究が進んでいて、かなり皆さんナーバスです。取り組みもいろいろなところで進んでいます。
海水は人体の組成ととてもよく似ています。ケイ酸があると珪藻が出る。なくなると、海にたくさんあるカルシウムを使うような系でいったり、それがなくても出られるようなものにかわっていったりする。力関係がそこで動いてしまうのです。
ですから、「汚染から守ろう」という立場でだけものを考えるというのは、「ちょっと待てよ」というような気持ちも私は大事だと思うのです。
【米山】山と川と海を結んで、環境とか海の問題とかすべてトータルで考えなければいけない。
山と川と海というのが、縦割り行政などの問題で、ちょっと連携プレーがうまくいっていないという感じもあります。その辺、畠山さん、どうですか。
【畠山】私はカキの養殖をしていますから、カキからそういうことが今年は歴然と見えています。
新聞とかテレビをご覧になって最近お気づきかと思うのですが、カキの日本最大の産地は広島です。