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広島はカキ生産の一番多いとき65%をつくっていたのです。宮城県なんて全然大したことない、10何%です。広島は全世界のカキ生産の20%です。全世界ですよ。それが広島湾でできているのですよ。

広島をよく考えてみると、四国があって、瀬戸内海で島々がたくさんあって、非常に閉鎖的な海なのです。太平洋側の人間は海といえば太平洋を考えて、太平洋の潮がそういうものをつくるのではないかと、錯覚を持っているのです。ああいう閉鎖的なところで、なぜ世界の20%のものがとれるのかということになると、結局、広島の生産者も行政もそうなのですが、部分的に物事を考えていたわけです。

私は、木を山に植える運動を始めてから、広島にも何回か行きました。うちの後継ぎのせがれを広島へ連れていって、どこを見せるかというと、もちろん船とかカキ処理場の近代的なものを見せますし、原爆資料館にも行きますが、太田川を見なければいけないわけです。太田川は島根県境の上流まで2〜3回つぶさに見ました。ひどいですよ。支流という支流は全部ダムで止まっています。しかも山はマツクイムシです。干ばつでしょう。結局、本流の太田川は細ってしまっているのです。

高橋先生のお話にもありましたように、結局魚とか貝の餌になる珪藻類が来て、増えなければいけないのです。この珪藻類が育つには、ケイ素が川から来なければいけないのです。これが全部ダムで止まっているわけです。なぜ珪藻類が川と関係があるかといいますと、珪藻類というのはカニの殻のように外側に殻を持っているのです。それがケイ素でできているのです。ただ、川からそれが供給されないと、珪藻頚ができないわけです。

ところが、鞭毛藻という別種のプランクトンはこの殻がいらないわけです。そうすると、海の中の力関係で、この鞭毛藻がふえるわけです。これが赤潮プランクトンの親玉なのです。その中に、ヘテロカプサという非常に問題のあるプランクトンが優占種でふえて、これがカキを殺しているのです。そうすると泡をくって、今広島県もやっと・・・。

本当に情けない話です。広島といえばもみじ饅頭かカキですが、400億もとれているカキの生産県でありながら、そんなことに気がつかないのです。

広島大学も非常に問題があると思うのですが、海の中のゴミを拾うとか、海底清掃をするとかいうところでお茶を濁していて、肝心の太田川とその上流の森林ということに、目をつけないできたのです。これがこのざまです。

宮城県は漁夫の利なのです。せがれが広島へ行って、新幹線で一関から降りて、「お父さん、勝ったね」といみじくも言ったのです。なぜかというと、広島から帰ってきて東北に戻ってくれば、何と言ってもまだまだ森は豊かですし、ダムの問題も少しありますが、広島に比べればまだまだいいわけです。

となると、こういう一山、『河北新報』ではないですが、「白河以北一山百万」と今まで言われてきていましたが、結局、大自然というものを保全すればするほど、これからむしろ価値が出てくるということです。もちろん、景気が悪くなると、そんなことはどうでもいいから、とにかく手っ取り早くお金が取れることについつい走ってしまいます。でも、環境経済学というところから、ちょっと長めに物事を考えれば、やっぱりどちらが得か? 黙っていても世の中は悪くなる一方ですから、全体として保全する方向で物事を持っていった方が、最終的にはこの地域が、東北地方が、これからますます脚光を浴びるのではないかと思います。

 

【米山】暮らしの面というか、食や農の絡みで、大葉さんからお話がありましたが、これからどういう取り組みが必要か、具体的なお話がうかがえたらと思います。

 

【大葉】先程「環境保全米ネットワーク」のお話をしました。都会から農村に人を呼ぶということは、すごいインパクトがある。参加してしまえばものすごくインパクトがあるし、いろいろ学ぶことが多いのですが、呼ぶまでがものすごく大変なのです。よっぽど意識が高いとか、よほど縁があったとか、だれかが行こうと言っているから、ということがないと、なかなかそこまで行けないというのが、本当のところではないかという気がします。現に今回も参加者がちょっと少なかったのです。

 

 

 

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