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さて、今言ったことをまとめますと、健全な海の生産の妨害要因というのは、窒素が過剰だということもあるのですが、三陸などはこれはあまりないですが、内海ではあります。ケイ酸の不足、鉄の不足。あとは環境ホルモン、トリブチルスズなどのようなものがあるということです。

これはブナの原生林で先程、出てきましたが、こういう木々でも育つときには、隣との間隔というのは非常に開いています。これだけ大きな木なのですが、これは私の息子です。ずっと、この木と木の間隔が開いています。木が育つときには、ある程度の距離が必要なのです。そのためには里山を活性させるというのでしょうか。植林で人工植林をしたままで放置しておいては、なかなかうまくいかない。手入れしなくてはいけない、ということがあるわけです。そして、植林後の間俄をして、木をちゃんと手入れするということで、ひとたび人が手を入れてしまったものをそうしないと、またちゃんとした山にはなかなかいかないということです。実は、こういうところを炭を焼いたりして、環境ホルモン対策に結びつけることもできるだろうし、実はケイ酸供給システムや鉄の供給システムというのは、これは土地の話を早送りしますと、浚渫(しゅんせつ)ヘドロを利用したような、腐食生態系といわれている特別な生態系があります。そういうものの中からつくり出すことができる、ということです。

今飛ばしたのはそのデータなのですが、そういうことが十分、技術的にはできるようになったということです。

これは最後のものですが、結局海の生産を里山から川、海へと、一貫して見ることが大事なのだと。これは今回のシンポジウムのテーマで、今までの演者の方がお話をしてくださっていますが、その最終に、沿岸生態系保全とか、修復の構想が、やはり必要なのではないか。山を山として大事にしていく。これは本当は大切ですが、時間がかかります。そして先程もちょっと言いましたが、生産体系がすでに変わっているわけです。たくさんの養殖のカキが作られ、海苔が作られ、ホタテが作られ、それによってプランクトンが取られる。そうすると、いろいろと欠乏するものが出てくるという現状を踏まえると、やはりある程度、全体を見渡した保全は、これは私たちの力ではできない。これは国にお願いして、公共事業の中でそういうものをやってもらいたい、というのが私たちの本音なのです。

そういう対策を盛り込んで、珪藻や海藻類の回復、これはケイ酸、鉄の供給も併せてそういうことをしていかなければ、最終的に私たちの目指す環境と生産は結びつかないのではないか、というところで、ひとたびここで終わらせていただきます。

 

【米山】豊かな海が恐い状況にあるというお話でした。

続いて、暮らしの面から大葉さん、お願いします。

 

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