これはひとつの例ですが、漁民たちは770円で1ポンドのエビを納めます。それが、最終的に日本で消費者が買うときには4500円になっています。その間にいろいろなものが介在して、値段が上がるという現実があります。エビがとれなくなると、今度は労働者として働くわけですが、非常に安い賃金で働いています。インドネシアのジャワの場合ですと、常勤の人が最高でも1万2000円、日雇いの人は実に低い。こういう状況が第三世界に広がってきている。
私は栄養学が専門なので、一番心配しているのは、そういう地域の健康状態が今、非常に悪いことなのです。特に栄養失調が多くて、8億人くらいいる、その中心がアジアなのです。
先月ベトナムに行って来たのですが、微量栄養素欠乏が多いのではないかということです。私は栄養学の立場から、ボランティアみたいな格好で、ベトナムと中国から頼まれまして、ヨードや鉄、ビタミンAなどを何とか食べ物に安いお金で入れて、こういうことから救えないか、という仕事をしています。
日本の学校給食の約1/3が捨てられているかもしれないと言われています。飽食の中で我々の生活があるわけですが、その裏側を見ると、私たちの生活を考え直さざるをえない。
また時間がありましたら、提言したいと思います。
【米山】日本人の食の国際化、飽食が、国際的にも海にも影響を与えているというお話でした。
では、続いて高崎先生、いかがですか。
【高崎】 <スライド併用>
環境と生産が実に密接につながっている。生産も環境も守りたい、というところから始めてみたいと思います。
環境保全がなぜ必要なのか、きっちり考えておく必要があると思うのです。なぜか。その最終目標がきっちりしていませんと、私たちは感覚として感情として環境を大事にしようとしても、実際に何かよくするためにはたくさんのお金が必要ですから、きっちりと筋道を立てて理解が得られるようにする努力も必要ではないでしょうか。
これは海の水質汚濁に関連する事故で、どの程度、漁業被害があったかというグラフです。赤潮だけ見てみますと、大体20億くらいです。それだけ考えてみますと、1年間に20億程度、これは赤潮だけですが、そんなものかなという感じもいたします。
20億というお金は別として、対策は本当に必要なのか。その明確な根拠はどこにあるのだろうか。また、そういう対策を行うとして、それができたとして、そのあとは経済的な波及効果というのでしょうか、将来にわたってどうなるのだろうか。このこともやはりきっちりと、お財布という立場はちょっとえげつないかもしれませんが、環境にはやはり必要なのではないかと思うわけです。
さて、海の生産はだれのもので、どのような重さを持っているのでしょうか、という質問です。これに私は非常にショックを受けたのですが、結論から申しますと、これは環境ではないのです。何かといいますと、これは94年のエジプトカイロ会議がその答えを出しています。地球人口の支配要因は、食糧の供給能力であるということを言っています。環境をやっている私は、非常にショックを受けました。これは環境ではない、食べ物だということですね。
このグラフは何かといいますと、この白いところが日本の点線です。日本が下がっているということがわかります。これが日本で、これがロシアです。
日本とロシアだけが下がっています。ロシアはソビエト連邦が崩壊したあとで下がっているので、やむをえないだろう。それでは何かといいますと、実は、これは海産物生産量の経年変化です。ほかの国は上がっています。ちなみになぜこれを出したかというと、実は経済的な問題ということで、ヨーロッパを中心に、すでに国の程として、要するに将来の経済の収入源として、また外交上の取引の材料として、水産を使おうというような動きがはっきりと出ています。これは特に、ノルウェーあたりが明確に出しています。その中で、日本はこのように下がってきているということです。