【木村】食の立場から、環境との関わりについてお話ししたいと思います。<以下、OHP併用>
食の国際化の中で起こっていることを中心に話してみたいと思います。皆さんもご承知のとおり、日本の自給率というのは非常に低くて、42%まで下がってしまいました。日本人の食卓には、非常に多くの輸入食料が入ってきます。
一番日本的な天ぷらそばを考えてみますと、そばもほとんど、そば粉は外から来ています。それから天ぷらの衣はもちろんカナダから来ていますし、エビはもちろん外から来ています。ご飯はある程度日本でつくります。つまり、ご飯とどんぶりぐらいしか、天ぷらそばの内容は日本のものではないという状況になっています。
日本がいかに自給率を低めているか。主要な国の穀物自給率の変化を見ると、日本は下がっているのに、他の国は一生懸命自給率を上げているわけです。フランス143%、アメリカ110%、西ドイツ94%。日本だけが下降をたどっていて、小麦は9%くらいしかない。
肉もそうですし、野菜も最近では近隣諸国からずいぶんまいります。
昔は冷凍のものがずいぶん外国から来ました。マグロとか魚類はずいぶん冷凍が来ましたが、今は空輸され、「空飛ぶマグロ」と言われています。1985年くらいはまだそうでもなかったのですが、最近になってどんどん増えつつあります。これはほとんど日本の刺身のために来ているわけです。
実は犬猫の缶詰も外から来ています。特にタイなどが多いわけですが、実はこの犬猫の缶詰をタイで作っていて、その規格が非常にうるさいらしいのです。例えば、何cmと決めた場合に、5mm以上プラスマイナスでだめだと失格するとか。タイの人たちは、自分たちよりも立派なものを日本の猫は食べている、なぜ日本の猫は何cmの差で文句を言うのか、と日本に対するイメージを落としているらしいのです。
今、日本の総菜もずいぶん外から入っておりまして、アスパラガスももちろん来ていますし、焼き鳥も全部、串に刺したものが来ている。知らない間にお袋の味みたいなものも、全部そこで作られているという状況に今なりつつあります。
日本人は世界中で一番エビ好きで、あらゆるところから日本はエビを買っているわけです。一番多いのがインドネシアで、どんどん買っております。
ところが、エビをとりすぎたためにほとんどとれなくなってしまった。昔は簡単な網で、しかけた網の中に入ったものをとっていましたが、今はトロールで移動しながら大量にとってしまう。インドネシアあたりではほとんど魚がいなくなってしまった。
しかし、エビは売れるから、今度は人工飼料で養殖を始めたわけです。畠山さんが言いましたが、養殖には二通りあります。人工の飼料を与えながらやる。しかも、その加工する工場を造らなければいけない。冷凍工場を海岸線に造って、海岸に養殖池を設ける。インドネシアのそういう地域では全部海岸のマングローブ林を切り取ってしまい、マングローブの海岸線がどんどんなくなってしまった。それが非常に大きな問題になっているわけです。
2〜3年前にメキシコでマングローブ林を少し見たことがあります。マングローブというのは、ひとつの植物ではないのです。何種類ものいろいろな木を総称してマングローブと言っています。しょっちゅう海面が上がったり下がったりするところにちゃんと生えている木なのです。海の浄化に非常に役立っているのです。陸上の下水などがここを通ることによって、いろいろな微生物や植物、小さな動物の餌になったりして、きれいな水になるのです。しかも、マングローブの下はエビとかの繁殖、魚の産卵をする場所というように、いろいろな機能を持っている。それを全部切り取ってしまうのです。そして人工餌料でエビをつくる。木を切って、工場を建てて、海はどんどん汚れていくわけです。
マングローブの下には葉っぱが落ちる。葉っぱが落ちたところには、いろいろな藻類や原生動物が繁殖する。それを食べる魚介類やエビを食べる小さな魚、カニ類が、マングローブの林の下に非常にたくさん集まっているわけです。こういう場所をどんどん潰したわけですから、その地域の人たちは、ここからほとんど魚もとれない状況になってしまったのです。今までそこで働いていた漁民たちも結局、職を失ってしまったのです。そこに出来上がった工場で働くようなことになってしまいました。