日本財団 図書館


【会場7]】鹿児島大学農学部の学生です。宇根先生にご質問をお願いします。

無農薬の稲作について少しだけお話しされましたが、長崎先生もお話しされたように、地球というのは水が全部循環していて、田んぼの水が海に流れていく、というお話になるほど、と思いました。福岡では無農薬で稲作を行っている農家の方々が5%もいらっしゃるとおっしゃいました。私も農学部なので、少しだけそれについての講義を受けたことがありますが、無農薬で作物を作るには、土づくりから始めて、害虫対策、病気対策と、すごく大変だと思うのです。私がちょっとだけ教わった教授は害虫駆除の対策としてアイガモ農法をすごく勧めていらっしゃいます。今日、宇根先生が話された無農薬農家というのはどのような方法で害虫対策を行っているのでしょうか。

 

【宇根】簡単に……詳しくは僕の本を読んでください(笑)。

ただ、言えることは、無農薬の稲作りの技術というのはマニュアル化されたものがないと。また、マニュアル化できない。今までの化学肥料、農薬を使う稲作技術は簡単にマニュアル化できたのです。いっぱい本も書かれています。だけど、今からの無農薬の技術というのは、その地区の環境を生かしていくということです。例えば、5%というのは誤解のないように、福岡県の5%ではありませんで、糸島地域という約2500ヘクタールぐらいのところの話です。つまり、例えばカブトエビを使って田んぼの草を食べさせるというやり方は、カブトエビがいない田んぼでは無理です。僕の田んぼはどんなにカブトエビを放流しても棚田ですからカブトエビは定着できません。そういうところにはそういう田んぼに合ったやつを探すしかないわけです。あるいは、同じカブトエビを使った田んぼでも、堆肥をやった田んぼではよくカブトエビが繁殖して、よく濁るけれども、堆肥が少ないところ、あるいは砂っぽい土では濁りが悪い。であれば、カブトエビ、プラスほかのホウネンエビを使うとか、除草機を使うとかいろいろなやり方があるわけです。

つまり、先程、海も地域地域でかなり違うんだという話でしたけれども、田んぼなんていうのは一枚一枚条件が違うわけです。だから、その違う条件をしっかり把握して、その田んぼに合ったような技術を作っていくのは、大学とか農業試験場のようなところでは不可能だと思います。もちろん、大学とか農業試験場も大事ですが、やはりそういう技術を作っていくのは一人一人の百姓であって、大学とか試験場とか農協とか指導員というのはそのアドバイスをする人間なのです。今まで、近代化農業というのは、試験場とか大学とか農協とか改良普及所が指導者で、右へ向け右、こういう新しい技術がありますよと引っ張っていっていたのですが、今からの環境の技術というのはそういうマニュアル化された上意下達の技術ではたぶん不可能だし、下手にそんなことをやるとかえって環境はもっと危ない状態に陥るかもしれない。ですから、多様なやり方が全国各地で行われていますので、僕に聞くよりは、実際そういうところへ出かけて調査されたらどうですか。

 

【会場8]】卸売市場協会の近藤と申します。

先程の福岡魚市場の青柳社長の質問に関連しまして、諌早湾のことです。私どもは若い頃から、諌早湾は干潟があって有明海を浄化するところであり、有明海の子宮であり、小さな稚魚が育っところだ、ということで聞いて育ってきました。けれども、あのような結果になっております。最近、漁師さんに聞きましたところ、「自分の過去の経験にないような赤潮が出た。南西の風が出たときに消え、今現在、出ていない。たぶん、諌早湾にたまった水を排水しているのが原因ではなかろうか。自分たちは学問的にわからないけれども、どうも今までになかったことが起きるのは、その影響ではなかろうか」という話でした。プログラムにもありますように「海の悲鳴が聞こえませんか」ということではなかろうかと感じております。

楠田先生にお尋ねいたします。諌早湾について、これから我々はどのように運動していったらいいのか、アドバイスがあれば…諌早湾の浄化なり何なり。この諌早湾の中に溜まった水は必ず悪くなっていく、と素人なりに考えておりますが、どうしていったらよいでしょうか。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION