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それを計算するために今のところはっきりした方式はありません。しかし、いろいろ実験もしなければならないので、私どもも貝を使って実験をしたりしているわけです。一番使いやすいのは貝なものですから。魚の場合は非常にややこしいのです。どこで食ったかわからない、ということがあります。貝だったら与えられたものをそこで食べますので、比較的使いやすい。

それでも、問題だけ申し上げておきますが、貝の場合だって糞を食べることがあるのです。海の動物は糞食と言いまして、糞を食べることが非常に多いのです。糞をなぜ食べるかというと、バクテリアが有機物を合成してくれているものですから、ほかの動物が出した糞が3日ほどたちますと、ほとんど倍近い窒素の量を持っていることがよくあります。糞が富栄養化していますが、それを餌にして食べているということがありますので、難しい問題はたくさんあります。

あるところでとられた貝、シオフキ貝とかアサリとかマガキとかユウシオ貝、ハナグモリ貝という名前がずらっとありますが、ここでは一番多かったのがバカ貝の仲間であったわけです。それで、バカ貝を使いまして、バカ貝がどれぐらい有機物を食べ、そしてそれを糞として出しということで、無機化作用をやっているかというのを1年間にわたって計算をしたグラフです。

バカ貝がこの地域で186トン、という計算結果が出ております。これを各種類についてやらないといけないわけですが、今のところ各種類で種類間にそれほど違いがないというので、貝類による浄化量ということで計算した例であります。こんなふうにして出してみると、貝というのは1年間に下水処理場の3分の1とか、それぐらいの有機物の働きをやっている場合があると言われているわけです。そんなことが今、研究対象になっています。

 

【会場6]】お話を聞いて、汚染の原因になるのを見たら、川であれ海であれ、私たちの子孫のために、私たちのためにも、声を大にして注意をしたり、その原因について行政なりみんなで検討していかねばならない、とつくづく思いました。お隣の方に「海を汚染するのは川とか陸からのものがほとんどでしょう?」と聞いたら、「そうではない。船の塗料とか網とかいろいろある」という話を開いて、私たちの手の届くところから、声を大にしてやっていかねばならない、ということがわかりました。

私が生まれたところには、ドジョウに足のはえた動物がおりました。子どものときから一緒に遊んで育ってきましたが、大人になって、これがサンショウウオだとわかりました。

川原の下においておりましたら、元気に巣立っていって、春にはいつも小さなオタマジャクシみたいなのができて、足がはえて…それを毎年楽しみにしていたのです。

しかし、この4〜5年、見られないようになりました。生活排水の関係で死んでしまったのではなかろうかと思います。いい環境のところがだんだんと失われていく。

私は宇根さんと同じように県庁に勤めて農業改良普及員をしておりました。農業試験場を振り出しにして退職し、今は前原で農業をやっております。そこには赤トンボも、土手には彼岸花も、そしてお腹の赤いイモリもおりましたが、何ヶ月か前に一挙にいないようになりました。全滅の原因は、ある団地の汚水が道を流れてきて、それが川に入って、田んぼに入ったのだろうと思います。

こういうことに対しては、色々な思いが先に立ち、なかなか声を大にして言えないわけですが、何らかの形で正していかないと、海も川も廃っていくことになる、ということがわかりました。みんなで声を大にして、言う相手の人たちの生きる道も考えないといけないと思いますが、やはりやるより仕方ない、と感じました。

 

 

 

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