残りをどうしても取り除きたいというために、現在、高度処理という名前の、もう一段階上の窒素、リンを取り除くための下水処理過程の改善が始まっています。それにはバクテリアを使うタイプのものと薬品を使う方法など多種多様あるのですが、とにかく今のところは窒素の除去にはバクテリアを使おうということになっています。福岡市では、リンを化学的に除去して、その取り除いたものを化学肥料にしてもう一度農地に戻す方法を考えています。
【会場2]】楠田先生にお聞きします。先程のお話で、窒素とリンの高度処理による排出量の減少、というお話がありましたが、それにかかるお金は住民の負担によるとおっしゃいました。その住民の負担というのは、具体的に、全体で、また1人あたりどのくらいのコストがかかるのでしょうか。
それから、現在の生活排水を意識して、今のお話はリンと窒素ということでしたが、その排出量を抑えることによって、どのくらいの削減ができるのでしょうか。
【楠田】現在の技術レベルでは、お望みのレベルまで水をきれいにすることができます。後は費用をいくらかけるか、ということだけになっています。技術がなくて水がきれいにならないというものは、今はほとんどないとお考えいただいて大丈夫だと思います。
現実には、下水道ですと、たぶん1トンあたりあと100円ぐらいお払いいただければ大丈夫ではないかと思います。現在の下水道の料金そのものは、必要な経費を皆さんお払いになっていませんので、実はもう少し高くなります。例えば、民間の会社によって今の下水道が完全に運用されていたとすると、今の下水道料金のたぶんあと2倍ほどいただかないと会社が倒産します。その倒産分は税金から入っています。だから、直接・間接に国民が払っている、ということになっています。実際の経費は、あと下水道料金を2倍ほど上げていただいて、さらに100円積んでいただきますと、先程お示ししました窒素の量がだいたい1/4に落とせるし、リンもやはり1/4前後に落とせるということになります。
【会場2]】それは、高度処理の施設が出来上がったらそういうふうに減少されるということですか。
【楠田】処理施設ができあがったらそうなるということです。
【会場2]】では、その大元として、人が生活する上で気をつけるということで減少を図ることはできるのでしょうか。
【楠田】例えば、窒素の大半は人間のし尿として出てまいりますので、それは減らせないと思います。また、家で出されるゴミは下水道に流すか、ゴミとして固形物で収集してもらうかのどちらかで、それ以外のものは貯めておくわけにはいかないので、必ず出てきます。農家ですと、ちょっと裏庭に積んでおいてくださいということになりますが、都会の真ん中のマンションでそれをやってくださいということはとてもお願いできない話です。ですから、ディスポーザーを使ったにしろ使わないにしろ、水系で流れていくか、固形物で出すかという選択しか市民は持ち合わせていないのです。
【会場3]】「福岡県みどりと食の会」の事務局長をしております佐藤と申します。
私たちは10年ほど前に「農業と緑の会」を作りまして、主として生産、流通の面で今日のようなシンポジウムを開きましたり、講演会を開いたり、先進地の視察等を行ってまいりました。この後に、さらに「海と食の会」を作りまして、水産業を主に、離島の漁業の実態やらいろいろな研究・調査をしてまいりました。ところが、どうしても環境と食の問題というのはどういう場でも必ず出てくる問題でして、先程の先生のお話ではございませんが、システムとして考えて、川上から川下から、そして海、こういう一貫したシステムとして問題をとらえまして、さらに研究行動を重ねていこうということで、この4月に両者の組織を統合して、「みどりと食の会」を組織しました。
今日、このシンポジウムに12〜13名が参加させていただきましていろいろ勉強させていただきました。そこで、私どもの方向に誤りがなかったということを大変うれしく思っているところです。