そして、結果的にこういう処分場問題を抱えている地域というのは、地域住民は反対していても、ほかの人たちがだれも反対の応援をしてくれない。結果的に「あんたたちのエゴだ」ということで、豊島もそうですが、言われていく。それから反対運動も、「地域エゴだ、あんたたちの身勝手な発想だ」ということで追いやられていくというところに非常に悲しさを感じている。
一生懸命そこで有機農法をやっていても、平等寺の米は買わないとか、豊島のみかんは豊島みかんで売れないとかいうことになる。豊島でも阿岐さんという方が養殖をされていましたが、もうやめられました。結果的に、汚染された魚を大都会の魚市場に回しても、自分は仕事としては納得がいかない。この問題が解決するまではできない、と話していました。新たな差別が生まれてくるのです。
処分場問題はゴミ問題め中でも非常に大きなテーマとして見ていかなければいけない。皆さんにぜひ自分の地域でこのような問題がないか見てほしい。
【小野】少し海から離れましたが、いずれ海と関係する部分です。私たちは生活すると同時に呼吸もするし、廃棄物も出すし、排泄物も出します。特に人間は廃棄物を一番出す動物です。それをどう処理したらいいのか、重い問題を投げかけました。
さて、おふたりの講師のお話とおふたりのパネラーのお話をお聞きしたところで、会場の皆さんからご質問とご意見をいただきたいと思います。
【会場1]】楠田先生にうかがいます。今、普通、川は非常にきれいになっています。これは下水道を完備したせいかな、と感覚的に窒素、リンの問題は片づいているのかな、と思っていたのですが、今のお話をうかがって、海の方の栄養塩類はあまり変わっていないのかな、と思いました。
時系列的に見た場合に、海の窒素、リン、富栄養化はどういうレベルにあるのか。高度経済成長期にかなりいろいろなことが言われたが、あの時代から見て回復しているのか、あまり変わっていないのか、それともまだ進行しているのか。そのあたりのお話をうかがいたいと思います。
【楠田】詳細なデータを手元に持ち合わせておりません。詳細なデータは、例えば、福岡の場合には福岡県の『環境白書』に経年変化が載っています。
全般的には改善傾向にあります。一時のようなひどさではなくなっています。特に、リンの方の減少が非常に目立っています。それは下水処理場が努力したわけではなくて、かなり前ですが、洗剤中にリンを含ませないということになって、発生源が構造上変わったためにかなり減っている部分があります。現時点におきましては、下水処理場は入ってきた窒素の約50%を除去しています。残りは、残念ながら今の技術ではそのまま流れ出ます。リンは半分ぐらい取れると思います。