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■図2.2.3 鉛直混合の違いによる水流、塩分、懸濁物質の堆積地点の分布の違い

川を上下流に拡げてみますと、海と川の上流の間に、感潮区間と呼ばれる潮が行ったり来たりする部分があります。ここでの反応は、今日は時間の都合上申し上げられませんけれども、化学的にも生物学的にも、上流の淡水と下流の海水の中とは全く異質の場になっています。生物の個体数はかなり少ないですけれども、上下流では見られないものがかなり存在しています。

ここのところはきわめて複雑な反応が起こっておりますので、上流から出されたものが必ず全部海に届くことにはなっておりません。

感潮河川では、淡水は上流から下流に流れ、海水は下流から上流へとのぼってきます。感潮河川は海水と淡水が完全に分かれていると分かれていない場合、そして、ある程度混ざっている場合があります。

博多湾のような湾では、ある程度混ざりあった状況にほとんどなり、陸上から出されたものが反応しつつ海に出ていきつつも、海の水が戻ってきて湾の中に戻すということになります。いつも陸上から海ばかり行っているわけでもありません。海から帰ってくるものもあります。

もちろん、こういう流れに植物プランクトン、動物プランクトンが乗っかって動いているところもありますけれども、一番の根本のところは上の水ばかりに焦点を絞るのではなくて、下にあります海底の部分、泥の部分の寄与というのが実は非常に高いということにも留意する必要があります。また、生物には、プランクトンとかお魚だけでなく、当然バクテリアもあります。これらがものすごく複雑な機構で物質を代謝しているということになります。

よく言われますように、富栄養化しますと、陸上からの窒素とリンが先程申し上げましたように赤潮となって有機物に変わります。それらが沈殿して底泥として溜まったときに、バクテリアの分解作用を受け、酸素を消費するものですから、上層水が貧酸素化し、魚介類の斃死を招くということになります。

このような観点から全体を考えますと、先程の図でもご覧いただきましたように、底に溜まっている部分というのが、非常に大きく影響を上層水に与えております。ですから、陸上をきれいにしたからといって、すぐには沿岸域がきれいになるとはとても思えないのですが、とにかく発生源でもう少し対応をとる必要がある。つまり、面源対策をもう少しきちんととっていかないといけない、というところにひとつのポイントがあります。

それから、きれいにしていく際には必ずコストの負担を住民の方にお願いしないといけませんので、その水域をどういうふうに使うかということ、つまり合理的な目標というのを何らかの格好で検討していく必要がある。ただ、きれいにきれいにというだけではものすごくコストが高くなりますので、どこかのレベルであきらめないといけないことになります。ですから、その辺の合理的なレベルを探りたいと考えています。

さらに、現実にはいろいろなことを解析する場合に、データの数が非常に少ないという問題があります。先程お見せしました窒素とかリンの表の中にも、雨水からいくら博多湾に入っているかとか、地下水としていくら博多湾に入っているというデータは存在しておりません。こういう調査をもう少し充実させながら、まず合理的な目標像を定めていただいて、それに達するための技術の適用をみんなで考えていったらいかがか、というのが私の主張です。

 

【小野】ちょっと難しい話も交じっていまして、わかりにくい部分もあったかと思います。

要するに、先程の長崎さんのお話のように、水塊というのがひとつの独立した動きをしている。特に沿岸では、博多湾なら博多湾というのがひとつの独立した動きをしている。その中で陸上から入ってきた水がどういう働きをしているか。博多湾では淡水が海水の上にかぶって流れていきますので、海の方から運んできたものが博多湾の底には結構入ってくるというお話でした。

わかりにくい部分は後程質問をお願いいたします。

それでは引き続きまして、片山さん、違った視点からお話をいただきたいと思います。

 

 

 

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