【楠田】宇根先生、長崎先生のお話にもありましたが、陸上と海とをつないで考えないといけない。私の専門は土木工学ですが、流域の水循環という観点から物事をとらえたいと考えて毎日過ごしています。時間の都合もあり、森、水田、畑、市街地、川、海、それぞれの要素について深く触れず、全体をシステムとして見ることに焦点を絞ってお話しします。
流域の流れをまず考えみます。陸域に雨が降り、その結果としていろいろなものが洗い出されて川の水となって、河口域を経て海に流れ込んできます。この川の水に人間活動由来のものがいろいろと負荷されています。農業の影響もここに入ってきます。このように水が流下しています。
河川の他に、実は地下水の流れがもう1本存在しておりますし、その他、大都会では上下水道のラインで流れがあります。ですから、陸域から海への流れというのは3本の流れ(川の流れ、地下水の流れ、上下水道系の流れ)があります。大都会ではこの3本がかなり大きくなっています。当然、人口の密集地域でないところになりますと、河川と地下水ということになります。
基本的な考え方は、海と陸という対比の中に、もう1つ河口域というものをきちんと捉えておく必要があるということです。日本語で河口域と書きますが、これは必ずしも概念的には川の口のところだけを意味しているのではなく、沿岸域、博多湾、東京湾、三河湾等が概念上河口域に含まれるものです。