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■図2.2.1 博多湾流域の水収支

通常、陸上からのフローを考えると、雨水は、福岡では年間1600mmぐらい降っています。福岡では、その内水道用に160mmぐらい使っています。筑後川の方から70〜80mm分ぐらいをもらっていますが、東京では1500mmぐらいしか降っていないのに水道で2500mmぐらいを使っています。東京湾への負荷は、東京湾の流域よりももう少し広いところの水を集めて入ってくることになります。

同じ沿岸域を考えるにしても、背後の都市の情況により、かなり性格が違うという可能性があります。

通常の上下水道の流れで見ますと、私たちが1日に使っている水の量はだいたい350l、お風呂に2杯という感じになります。福岡市全体ですと、夏場で50万トンぐらいになります。固形物で福岡市に入ってくる食料は、だいたい1日に2千トン、水が50万トン、固形廃棄物が2千トンぐらいになります。

今、沿岸域を汚しています窒素とかリンによる富栄養化の問題の話に移ります。例えば、実際に博多湾に入っている下水処理場への窒素の量は、1人1日で0.9gとか1g弱になります。ですから、350lの水の中に1gそこそこを混ぜて入れている、という濃さになります。ゴミですと、人間1人あたり1日1.1kgぐらい出しています。ですから、人が出しているものは、350lと1kgと1gということになります。最近話題になっています環境ホルモンですと、その1グラムのさらに1/1000、1/10000というレベルの議論ということになります。ですから、ものの流れを扱うときに、水に溶けているものは、固形物に比べて格段に量が少ないというのが大きな特徴になります。

それを沿岸域のところでどうするか、ということが問題なのですが、問題の捉え方にフローとストックがあります。フローは、どんどん流していこうという流れの方で、ストックは蓄積分ということになります。沿岸域の汚染というのは、水が汚れているという意味でフローに問題があります。水の下には泥がありますが、泥が汚れているというのはストック的な汚染ということになります。

 

■図2.2.2 博多湾の負荷収支

これはすでに公表されております博多湾での入ってくる物質の量で、陸上からどのぐらい入ってきて博多湾から外に、玄界灘、筑前海にどのぐらい出ていっているかという、計算によります推定値です。

上の方がCOD、つまり有機物に相当するところですが、下水道経由で入ってくるもの、河川で入ってくるものに比べて、博多湾自身で生産されているものが非常に多いことがわかります。つまり、陸上で除去できるというのが、この下水というレベルで、内部生産がこれだけになっています。そのうち外洋に出ていっているのがこの程度ですから、外洋に出ていっているものの大半は博多湾で生産されているものであって、実は陸上から負荷されているものではない。これをどう制御をするか、博多湾が有機物で汚れてくるときにどう制御するかは難題です。

内部生産によりCODをつくり出しているのが窒素とリンですが、窒素ですと年間3700トンぐらいが下水道で入っています。あとは河川で入っている分、農業等の陸上からの負荷、あるいは市街地の汚染分の負荷です。当然、内部生産というのは内部でつくられるものです。これらの一部が外洋に出ていくということになります。リンですと200トンぐらい下水道で入って、河川で90トンぐらい入ってきて、海底からの溶出分(泥から出てくる分)が加わるということになります。

現在、陸上からの負荷を減らすために下水処理をもっと高度化し、窒素あるいはリンの負荷を半分ないしは1/3にしようというものですが、そのための費用の負担というのは住民の方にお願いするということになっています。福岡ではリンの方はすでに高度処理に入っていまして、現状の1/4ぐらいまで落とそうということになっています。そうしますと、残りは面源負荷ということになります。この河川由来の分をどう減らしていくかということになりますと、陸上での農業をはじめとして、皆さん方の各生活の場でご協力をいただかないときれいにならないということになります。

 

 

 

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