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カメ類はみんなそうでありまして、中にしっかり海に浸りこんだオサガメというカメがあります。こういうものは卵を産むのにも海の中で産んでしまうというやつですが、同じ海の中で産むのですが、やはり陸が恋しいのでしょうね、浅瀬に産むのです。海洋の珊瑚礁なんていう波の上に出かけたような、そういう浅瀬に行って産むという習性があります。

逆に、陸の方から海の方にだんだん近づいていこうという勇気のある昆虫たちというのがおりまして、それは、海の中にいる海アメンボウというのがおります。これは徹底的に海の生活に適応した昆虫です。アメンボウというのはご存じですね。池の中にスイスイと泳いでいるやつ、その仲間で海の中まで入り込んだやつが海アメンボウで、体もずいぶん海に適応しています。これはまきに波のまにまに漂いながら、流木でありますとか流れ藻でありますとか、そういうものに卵を産みつけて、徹底的に海の生活に入り込んでしまっているのもあります。

ことほどさように海と陸というのは切れていますが、多少はつながっている。そのつながりの部分というのが、私どもにとって、生物学者にとっても大変おもしろいし、海のことを考える上でもいい指標になってきています。このシンポジウムを計画なさった自然資源保全協会の方では、海と陸とのつながりというものを考える一連のシンポジテムを計画しています。

 

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小野勇一

 

今日は、宇根さんに最初に農業の、海というのは小さい声で言わないといけないくらい海の話ではなかったのですが、話をしていただきました。そして、その農業の中で、稲から始まり、稲を取り巻く虫たちの話になり、さらに虫たちが生活をしている環境というところに広がった話をしていただきました。その辺のところから、陸から見た海という話が出てきたわけであります。

長崎さんの方には、逆に今度は海の方から見た陸というような感じ方のお話をいただきまして、私は一番頭にとどめておかなくてはと思ったのは、最後の方に出てきた、海というのは決して一様ではない。いろいろな水の塊の集まりなんだと。水の塊どうしがぶつかったら、そこで潮目ができたりいろいろするわけですが、しかし、いろいろなものが流れ込んできても、その塊の中だけで一応閉じて片づけているんだという話なのです。そういう面から見て、海からもう一度陸上を眺めてみようというのが、このシンポジウムの目的であるというふうにもうかがっておりますし、非常にそれは大変おもしろい視点のひとつだと思います。

福岡のシンポジウムでは、そのほかに、例えば干潟の問題でありますとか、ゴミの問題でありますとか、そういう面も含めて、海がそういうものを受け取ったときにどうするかという話も話題として入れたいということで、今日はパネラーとして楠田さんとか片山さん、楠田さんは干潟の方のご専門でございますし、先程ご紹介いただいたように片山さんはゴミ問題の方のご専門のようであります。そういうことで、これから皆さん方のご意見をいただこうかと思います。

お願いを申し上げておきますが、会場の方からもいろいろなご意見をいただきます。これは自分で、いきなり意見をパッと立ち上がって言うのはなかなか難しいでしょうから、先生方に対する質問というかたちでも結構でございます。そういうところから時間をつくりますのでよろしくお願いいたします。

では、最初にご講演をいただきましたおふたかたの先生方に、たぶん言い残しがあると思いますが、順序として、最初に長崎さんが宇根さんの提案されたことに対して何か疑問に答えることができるぞということをおっしゃったので、その辺のところからお話しいただきまして、次にそれに対する反論を宇根さんにお願いしたいと思います。

 

 

 

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