だって、メダカが逆上れるような用水路、今は用水路と排水路を分離して排水路からしか魚は逆上りません。けれども、田んぼの排水をよくするために、田んぼを乾かすために排水路は深く掘らないといけません。今の深い排水路から田んぼには、魚は逆上れません。それで、福岡県も圃場整備が進むにつれて、ドジョウ、メダカが激減していったわけです。
僕が普及員になった昭和48年のころは、僕はニ日市の農業改良普及所にいましたけれど、新潟ではメダカも食うそうですね。メダカの干物みたいなものを僕は買って帰りましたけれども、ドジョウを百姓からごちそうになりました。あのころまでドジョウは本当にいっぱいいましたけれども、圃場整備が始まったとたんにいなくなりました。つまり、メダカを大事にする圃場整備、ドジョウを大事にする圃場整備なんてできないことはないと思います。田植えのときだけは、排水路の水位を上げて田んぼに逆上れるような工法もできないことはないでしょうね。だけど、そんなことをやったら工事費はそれだけで跳ね上がります。その負担は百姓に押しつけられるわけでしょう。だれもそんなことをしようとはしません。
だけど、メダカとかドジョウとかが増えて喜ぶのは百姓だけではないです。そこに散歩に来た人たち、町の人たち、そこを通りすがる人たち、みんなが「ここの川はきれいだな。メダカが泳いでいる。フナが泳いでいる」と楽しめるならば、そういう負担は税金からやってもいいと思うのです。そういう発想の農業政策がやられてきませんでした。それをやるべきだと僕は主張してきています。詳しくは、今日の西日本新聞の社説に僕の説がほとんど取り上げられていますので、もし西日本新聞を読まれている方は今日の社説を読んでください。ついでに、僕が作ったマンガのイラストも取り上げられています。読んでいない人は買ってください。
それはとにかく、そうやって今までは田んぼの中だけ、稲だけを見ていたのが、ただの虫、自然の生き物を自分が育てているんだと百姓が感じはじめたときから、川と田んぼの関係まで目が広がったということです。川の工事のあり方、川と田んぼの生き物の行き来ほどうあるべきかというところにまでだんだん関心が向いてきたということです。ただ、こうなると完全に稲作技術を逸脱してしまっています。今までの日本の農学、農業研究機関は、そういう世界はまったく研究していません。そういうのをやってこられたのが、あとでコーディネートされる小野先生たちのグループなのです。つまり、農業の範疇からはみ出てしまったわけです。
そうすると、これは百姓のボランティアでやるしかないという格好になるわけです。僕自身は、これも農業だと思っています。メダカ、ドジョウを育てる、ゲンゴロウ、トンボを育てる、川を豊かにしていく、これも農業の一部なのです。農業の一部というか、農業そのものなのです。それをきちんと農業政策が評価してこなかったから日本の環境はこれだけおかしくなってきたわけで、それを政策転換してきちんと評価しようではないか、本来、それが明日投票の参議院選の争点になるべきだというのが、今日の西日本新聞の社説です。
■農薬:田んぼ→川→海
では、そこから海にどうやって思いが広がっていくのかとなると、まだまだ私たちは実感としてとらえていません。ただ、残念なことを少し報告しておきますが、別の方向から海というのは身近に見えてきています。今、ダイオキシンという物質が注目を浴びています。環境ホルモンそのものなのですが、実は日本の水田というのは相当ダイオキシンで汚染されているのはご存じですか。これは残念なことなのですが、かつてダイオキシンを含む除草剤を日本全国の水田で使っていました。それがいまだに残留しているというのが先日の愛媛大学の発表で明らかになって、僕もがっくりきたのです。しかも、その除草剤というのが福岡県が生産している除草剤でした。もう15年たちましたから名前もきちんと明かしますが、MOという除草剤です。あるいは、サターンMという除草剤です。MOというのは三井東圧大牟田が開発して、多いときは福岡県の水田の約7割ぐらいで使われていました。この中に不純物としてダイオキシンが入っていたわけです。
これを我々は15年前に知りまして、「うわー、これはやばいぞ」と。