僕は2年前まで農業改良普及員を23年間やっていまして、毎日村を飛び回って、田んぼの中へ入ったり、百姓と話したりする仕事をしてきました。今は農業大学校で教師をしていますけれども、大学校と言ったら偉そうな感じがしますが、ほとんど田んぼの中で学生と一緒に草取りをしているという毎日です。
今日は、田んぼと海の関係を話してくれということだったのですが、僕もあまり海のことがわからないのです。ただ、海のことはすごく気になっています。だけど、実感がわかないのです。最近、漁師が山に木を植えるという話を聞いて、僕はすごく感心して感動するのですけれども、山の木がなくなると魚に影響を与えるという実感がわく漁師というのはすごいなと思います。僕も体で感じる、そういう世界を農業の方に持ち込みたい、学びたいなと思っています。
申し訳ありませんが、今日は海から見た田んぼを僕は語れませんので、田んぼから見た海を語りたいのですが、ほとんどの話は田んぼの中でとどまってしまうと思いますが、気持ちだけ察してください。
僕は学者ではありませんので、今日も朝から我が家の田んぼの草取りをしてきたのですが、ちょっと僕は最近足をけがしまして、田植えをして1週間目に田んぼの除草機を押せなくて、かなり草が生えていて苦労しました。
■赤トンボ:田んぼ←→海
今は、赤トンボが日に日に増えてきています。九州というのは日本で一番赤トンボを愛するところなのです。赤トンボというのは東京の言葉でありまして、九州では盆トンボとかショウロウトンボと呼ばれています。いわゆる真っ赤なトンボがポツポツいるやつではなくて、群れ飛ぶ赤トンボです。実は、この赤トンボが、盆トンボが、ショウロウトンボが田んぼで生まれているということはほとんど知られていないのです。学校の教科書は東京で作られるものですから、東京の赤トンボは違います。東京では、やはり群れ飛ぶ赤トンボ、田んぼで生まれる赤トンボがいるのですが、これはアキアカネなのです。よく似ていますけれども。ですから、学校の教科書にはアキアカネは載っているのですが、いわゆる盆トンボ、ショウロウトンボは載っていません。これは正式な名前はウスバキトンボといいます。真っ赤ではなくてちょっとだいだい色です。ほとんど田んぼで生まれているのですけれども、今、どんどん増えてきています。
というのは、我が家の田んぼも40日前に田植えをしました。つまり、田植えをしたらすぐ飛んできて卵を産むわけです。で、30日か40日ぐらいたつと、今も夜になると稲の茎にヤゴが上っていって、夜中にトンボになるわけです。露に濡れて朝までじっとしています。ですから、朝行くと(もちろん相当早起きしないとだめですが)、露に濡れた赤トンボが稲につかまってじっとしています。太陽の光で露が乾くのを待っているわけです。ですから、田んぼで生まれたあとはどこにでも飛んでいきます。川原に行ったり、山の上に昇ったり、学校の校庭に行ったり、団地の芝生の広場に行ったり。ですから、どこで生まれているかわからないのですけれども、田んぼで生まれているわけです。