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そうすると、川が少しくらいあふれやすくても構わない、ということになります。今までは、川沿いの木は皆すぐに切られてしまっていたわけです。それは、洪水になったときに水が流れにくいから、という理由です。

しかし、そうではなくて、川沿いの森というのはそこまで含めて川なのだ、ということで言えば、これは絶対に切ってはいけないのです。ですから、多少洪水になりやすくなったとしても、堤防や水害防備株をつくることによって防ぎましょう。今まで「絶対に水があふれてはいけない革と言っていたのを、「あふれてもしようがないではないか」というように方向転換しているわけです。

だから、それを考えれば、川沿いの森も今までのように切らなくても残せるのではないか、ということにつながると思うのです。そういう意味で、私は水害防備株というものを評価しています。

 

【木谷】松永先生、先程、手を挙げられましたが。

 

【松永】タイでは、エビの養殖をやっています。海にある森林、マングローブですが、そこを切ってエビの養殖場をやっています。そうすると、そこから汚水が出て、海を汚染するという問題があります。今、タイの経済もダウンしていますから、それを浄化するのはほとんど不可能です。去年から私どもがタイへ行って指導しているのは、もう一度マングローブを植えよう、ということです。今まであったマングローブをもっとふやして、マングローブで浄化する、ということを今やり始めました。

あそこは熱帯ですから、1年で1mくらい成長します。あっという間にマングローブの大木になります。去年、今年、来年も行って、そこで木を植えるというようなことをやっているのです。

地球温暖化という問題では、確かに二酸化炭素は海が吸います。しかし、陸が吸うということで、樹木も非常に大きいと思います。老木になると、二酸化炭素を吸って、また吐き出すので、平衡状態になります。そういう木は切って、新しくしていくのです。木は50年使えば、十分炭素サイクルとしては役立つ。新しい若い木を植えるということで、さらに炭酸ガスを吸い込むことができるのです。今我々が個人的にできることは、木を植えるということではないか、という気がするのです。

単に魚をふやすということではなくて、地球環境保全ということでも、我々は植林という輪を広げなければならない、と考えています。

 

【木谷】それでは、会場にお越しの皆さんからご質問があれば、ご発言いただきたいと思います。

 

【会場1]】子どもの頃、台風が来ると、必ずおいしい魚がたくさんとれたことを思い出しました。今思えば、森からのいろいろな虫やおいしい栄養が川から流れ出るから、それを魚が食べることによって、脂の乗ったおいしい魚になり、大量にとれたのだと気がつきました。最近、ダムがたくさんつくられて、嵐が来ても山奥から栄養が川に流れないで、ダムの中で止まってしまう。今、ダムをつくることに反対しているといいますが、今までつくったダムから海に栄養が流れるような方法が何か考えられているのでしょうか。その辺をお聞きしたいのです。

 

【小野】それはほとんど無理です。ダムの問題点は、山から出てくる土砂です。本当は川が海岸まで運んでいるわけですが、それを全部止めてしまう。今、日本中で海岸が削られています。海岸浸食というのですが。これは当たり前のことで、出てくる土砂を全部止めてしまって、海の方は昔と同じエネルギーで削っているわけですから、海は運ぶものがなくて、海岸にもともとあった砂を削ってしまう。だから、海岸線がどんどん後退するわけです。それで、これを何とかしよう、ということになったのです。

黒部に黒四ダムがありますが、あれも土砂だけを一度吐かせるため、土砂吐けをつくったのです。そうすると、逆に海がまた濁ってしまう。かえって漁業者に問題が出てくるのです。ですから、ダムがあるかぎり、私は今の技術では不可能だと思います。ダムを減らす方向で、要らないダムは壊すという方向で、やるしかないと思います。

そういうことをいうと、すぐに電気はどうする、ガスはどうする、という議論になるわけです。それは都市生活者、水と電気を大量に消費している人たちが、いかにそれを減らそうとしていくかが大事はことだと思うのです。

 

 

 

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