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【柳沼】小野先生が言った黒部のダムは、何十億もかけて日を開ける装置をつくったのです。ところが、湖底には無酸素の水がたまっている。いろいろな生物が酸素をたくさん消費しますから、無酸素状態の水が湖底にたまるのです。そして、泥、土砂が全部がたまるのです。それを下から開けるので、真っ黒いヘドロがワッと出て、黒部川の下流の生物が全部死んでしまったのです。富山県の漁民は「もうだめだ」と。それでも2回やったけれど、もうやれないでしょう。そういう意味で、だめなのです。

富山へ行くとおわかりになりますが、ダムを巨大にたくさんつくっているから、海岸線がずっと後退しています。我が北海道も同様で、子どもの頃に泳いだ石狩川も後退しています。海の家が今、ひっくり返りそうです。それにしても頑丈な護岸をしています。半分くらいが護岸です。それでどういう現象が起きるかというと、生物が育たないのです。波を返しますし、いきなりこれですから、生物が育たないのです。そうすると、そこはゆりかごではないわけです。そういういろいろな副産物ができる。もう少しダムに対する知見や議論が必要なのですが、そういう側面があります。

 

【小玉】ダムを壊す、という市民運動があります。「ダム・ファウンデーション」により、アメリカではカリフォルニアを中心に、すでに7つくらいのダムが壊されています。

市民の声もありますが、このダムを壊したときには、流れはどうする、汚泥はどうする、といった十分な環境調査をしています。結局、壊して復元するためには、つくるよりもお金がかかっているのですが、そのことが生態系にいい、あるいは市民の声だ、ということで、それを進めている団体があります。

そのくらい私たちも、ダイナミックにできればな、と思っています。

 

【松永】今日の講演ではお話しできませんでしたが、いわゆる包丁につく鉄サビと、森林がつくり出す腐植土の付いた鉄では機能が全く違うのです。これが海藻を育て、プランクトンを育てるのです。ダムをつくりますと、そこに水が停滞します。そこで成分が淡水プランクトンにとられてしまう。だから、いくら上流水を海に流しても始まらないのです。

ケイ酸の話をしましたが、ダムの中での化学反応によってそれが減る。ですから、ダムをつくるということは上流水を海に流すのだ、というイメージで、とらえてもらったらいいのではないかと思います。

 

【木谷】会場から後もう一方。

 

【会場2]】先日、生物が環境を浄化する、というのをテレビでやっていました。重油で汚染された海岸をきれいにしたり、ラーメン屋さんの排水溝などにそういう生物の粉をふりかけると油で染まることがない、と聞きました。少しそのことを聞きたいと思います。

 

【松永】私もそのテレビはみました。普通の海域にも重油を分解する菌(バクテリア)はいるのですが、常に油があるような湾と比べると、ケタ違いの量です。そういったバクテリアを使うと、確かに分解は速くなるのです。窒素とリンを与えるとその菌の作用がさらに働くため、日本でもそれを使おうという動きがあることは確かです。しかし、まだ認められてはいません。これから、バクテリアを利用する方向は、大切なことかもしれないと思います。

 

【木谷】今日はたくさんのことを学びました。

海・川・森、それぞれつながっている。

その自然を守る、残していく。

私たちが日常の生活で身の回りでできることをやっていくことが、環境を守ることであり、それが海洋汚染の防止にもつながる、と受け止めております。

 

 

 

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