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そういうシステムに疑問を持たないで、水を使っていていいのか。私たちは生活で水を使う場面がたくさんありますが、水道しか使えないというわけではないのです。よく市民団体で出る話ですが、洗車の際ホースから水を出し放して1台洗うと250lの水を使います。バケツに水を汲んでブラシでこすって汚れをとると、30lで済みます。では、残りの220lは?水道代が高いということではなくて、その辺の基本的なところ、生活をしている人たちの視点というか、本当にどのような暮らしがしたいか、というところが解決に一番近いところだと思います。

 

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小玉豊治

 

先程の廃棄物の問題に戻ります。皆様も非常に興味があると思いますが、廃棄物埋立場から汚水が漏れて重金属が川に入ると、大変さまざまな害が出てきます。では、廃棄物処理場とは何だろう。もちろん燃やせないものを埋めます。燃やせないものといえば産業廃棄物では建材や汚泥、通常生活から出るゴミも埋めています。「埋めきれないものは燃やしてしまえ」というより、「燃やせるものは燃やしてしまえ。燃やせないものは埋めてしまえ」となります。

燃やせるものでは、皆さんご心配のダイオキシンがあります。塩化ビニールを低温で燃やすと、ダイオキシンが飛灰で空に飛びます。同時に燃やした残渣の中に残りますから、それを廃物処理場に埋め立てると水と一緒に出る危険性もあります。では、飛ぶ物の中にダイオキシンが入らないよう、電気濾過しようということになります。これは対処療法です。

処理場にダイオキシンが入っている灰が埋めてある。水に混じって出るかもしれない。では、屋根をつけて完全密閉しよう、となります。コンクリートあるいはシートで固めて、水が入らないようにしよう。入ったものはポンプで汲み上げて濾過しよう。これも対処療法なのです。塩化ビニールは苛性ソーダの産物です。海外から食塩を輸入して、電気分解すると苛性ソーダと水素と塩素が出ます。苛性ソーダはプラスチックその他の安定剤に使われるのです。ですから今、世界中の暮らしの中で苛性ソーダは非常に大事なのです。水素は空気中に広がり、害はありません。ところが、塩素はどうしようもない。昔少ないときには海洋に投げていたそうですが、これがとんでもない毒性があるのです。第一次世界大戦の毒ガスの第1号が、塩素だったと思います。

塩素を固定化する画期的な方法として、塩化ビニールが出たのです。苛性ソーダを生産する工業形態は非常に重要な産業だそうです。その中で仕方がなく出る毒物を固定化して生活に役立てるのが塩化ビニールだから、これほどいいことはないとされてきました。ところが、燃やすとダイオキシンが出ます。皆さんやめればいいと思いますね。私も「塩化ビニール使用をやめよう。メーカーは作らないようにしよう」と言いました。ところが、企業はやめられません。苛性ソーダを作らなければならないからです。

なぜ私たちには塩化ビニールが必要か。ちょっと厚くすればポリエチレンでも間に合います。薄くて丈夫なものが塩化ビニールだと思ってください。ラップやトクホンの裏のフィルムなどです。結局、対処療法ではなくて根本は何か?と見るのが、生活者として今、考えていただきたいことなのです。そして、その根本を変えるには皆さんが言い続けることです。それから、今の企業行為であれば、行政、政治、規制だったりするはずです。

アルミ缶のリサイクルも「いいことだからやろう」とやっています。しかし、根本は?と考えてみてください。自動販売機のためにアルミ缶を作った。輸送しやすいように丸い形にした。これだけ缶があるのは日本だけです。そういう気づきの中から森や川や海、それが私たちの生活にどう関わっているか、何が原因か、わかるのではないかと思います。

少し大まかな話ですが、流れだけお話ししました。

 

 

 

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