輸入水産物は農業の比ではない。石油に次いで第2位、非常に多くの水産物が輸入されています。北海道の水産物総生産量は、年間200万トンくらいですが、水産物輸入量は今300万トンを超えています。生換算、頭のついた形で440〜450万トンになるという計算もあるように、相当輸入されています。これでは漁業者はやっていけません。北海道の漁業といえば、シャケとホタテとコンブということになっています。そればかりではなくて、カニやカレイやホッケなど、おいしい魚がたくさんあるのです。
シャケは岩手の方も含めて年間25万トンとっています。日本の優れた増養殖技術と研究者と行政の努力でようやく達して百年経ちました。輸入シャケ・マスも25万トンなのです。全体で50万トンになり、多すぎるため「1匹100円だ。持っていけ」という状況になっています。それで「魚がとれすぎだから、120の捕獲河川は多い。たたもう」という指導になり、今、たたむ作業に入っています。私は非常に不満です。しかし、生きるためには手を打たなければならない。やむを得ず、たたむところはたたむ。
食料は自前でやらねばならないという当たり前の論理があるのに、どうして25万トン輸入しておいて多すぎるから生産をたためという論理が出るのか。
道内には1300の水系、2万本ほどの川があります。そのほんの一部、120ほどのシャケ・マス河川を利用して、シャケ・マスを捕獲・放流し、百年の到達点として今の生産額に達したのです。矛盾の中、漁場が低迷し、生産を縮小すれば生きられるという論理にすり変わっていった。非常に残念です。
そもそも森づくりを始めようとする大部分の漁業者の気持ちは一番わかりやすい。「シャケは森の産物だ」と言ってきました。それはそうです。シャケは森がなければ、存在しないのです。千歳川の上流域の水産庁のシャケ・マス孵化場は、鬱蒼たる森に包まれています。一度ご覧になればわかります。森また森です。そこに帰ってくるシャケが道内のオホーツクその他の生産を支えている。捕獲河川を中心に努力してきたのです。その周辺の森づくりをしてきました。湧水がなければシャケは絶対生産できませんから、その原点として森があるのです。
道内の河川は1300水系。石狩川は一水系ですが315〜317の河川があります。かつては320数kmの大河川が、今は270kmくらいの短い河川になり、天塩川に長さで負けています。治水のために一生懸命やりましたが、あまりにも治めすぎました。それが結果としてどういう生態系の変化を起こしたか、という指標にもなる。そういった河川の、北海道弁で言えば「いじくりすぎ」に我々は直面したのです。
河川は2万本。休みなく絶えずとうとうと森の栄養を海に流し込んでいました。それがいたるところで寸断され、大規模ダム(高さ150m以上)の高い突堤で水をためる。巨大ダムは道内には20、全国には2500あります。まだまだ造る予算を持っています。建設省が河川局を、省庁再編で「絶対放さないよと言ったのはそのためだと私はうがって見ています。ものすごい予算ですが、またふやしました。
全国にある巨大な2500ダム、道内にある大規模なダム20の他に、実は砂防ダム、堰、その他があらゆる河川にあります。何万もあり数え切れません。数えてみましたが、できませんでした。お役所は縦割りだから、自分のところは親切に教えてくれても隣はわからない。係が違うと、わからないのです。そうして栄養はあらゆる意味で遮断されています。
道路の問題もあります。生活道路も50年前にそういう認識でつくられていたら、沢水が入るような構造にできたのではないでしょうか。しかし、今はすべて遮断されています。森の養分は昔のようにとうとうと海に流れない。特に日本海はその影響が大きいと思います。したがって、磯焼けも日本海に集中的に来ているのではないかと考えられます。
そうしたことに対して、私は森づくりという点で漁業者と勉強しながら取り組んでいくつもりです。「流域の視点」を提起したいと思います。森林法、河川法、海岸法、そして協同組合法という、我々に関わる法律を少しだけみれば、いかに流域の視点になっていないかがわかると思います。
【木谷】小玉さんはリサイクルや環境を守る市民運動を活発に続けています。海洋汚染の原因の7割が陸で起きると言われ、私たち人間の活動、公共事業や企業の活動、生活そのものも原因であると思います。そのようなことも含めて、少しお話をいただけたらと思います。