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漁業者が、岸壁あるいは海岸林のことを、「魚寄せ林」「黒海山」「魚隠れ林」というように、自分たちの森を、それぞれ魚という言葉を冠にして大事にしていたのです。だから、明治政府はそれを、新しい森林法の中で無視できなかったのです。列強の富国強兵の中で飛砂防備保安林など物として森林を見ていかなくてはいけないときに「魚つき保安林」も入れざるをえなかった。しかし、入れただけでずっと放置されてきたのです。この100年間に2回検証はありましたが「たかだか魚の影をつくんだべ」あるいは「どうなるのか。魚が寄ってくる程度かな」としか証明されなかったのです。

戦後、昭和20年には魚つき保安林は4万6000ヘクタールでしたが、ずっと減っていって、今は2万ヘクタールなのです。他の保安林は、昭和20年に70万ヘクタールあったのが、今86万ヘクタールで、どんどん増えています。魚つき保安林だけが減っているのです。少なくともこの10年間(20年前から魚つき保安林を見ていますが)法としても制度としても、全然相手にもされません。学者先生がそれを言われたとしても、これは本当にそう思って20年前から見ていたのでしょうか。それはそれとして、魚つき保安林を今まさに漁業者は心から海岸の森ではなくて、河畔株として、内陸の森として、本当の意味での「魚つきの森」に制度に変えてもらいたい。

沿岸域にたくさん森があります。川の周辺に河畔林が川の周辺にあります。これを「魚つき保安林」の網をかぶせて保護してもらいたいと思うのです。そういうこともお願いしながら、無我夢中でやっている今日この頃です。

 

パネルディスカッション

【コーディネーター】木谷洋史(北海道新聞社 論説委員)

【パネラー】

小野有五(北海道大学大学院 地球環境科学研究科 教授)

小玉豊治(日本リサイクル運動市民の会 北海道代表)

松永勝彦(北海道大学 水産学部 教授)

柳沼武彦(北海道指導漁業協同組合連合会 参事・環境部長)

 

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木谷洋史

 

【木谷】 松永先生のスライドを見て、日本海岸で磯焼け、砂漠化が起こり、海が真っ白になり、それが広がっているのに改めてショックを受けました。

磯焼けだけでなく、今、海洋汚染にはいろいろあります。私も新聞社におりますし、報道の現場にいたこともありますが、いろいろなニュースが入ってきております。ハイテク工場の地下水汚染、家畜のし尿の流入といったように、汚染が最終的に海に流入するわけです。柳沼さんのお話にもありましたように、事故による油の汚染もあります。ナホトカ号のような規模の大きいものも含めて、海が今、悲鳴をあげるに近い状態であると認識しています。そういった状況を打開し、解決していくためには、今後どうしたらいいのか。これを中心に、パネルディスカッションで話し合いたいと思います。

まず講師の皆さんにご意見をうかがい、会場の皆さんから質問を受けることができれば、と思います。

それでは、松永先生、先ほどのご講演の補足も含めて少しお話をいただけたらと思います。

 

 

 

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