■砂漠化の原因2]:水温上昇説
海の砂漠化の原因として、もう一点、よく言われているのが、水温が高くなったということです。これも馬鹿げていると思われます。
本州の水温は、少なくとも5℃は北海道よりも高いのです。函館湾でもそうですが、私の知っている範囲、見た範囲で言うと、気仙沼湾、大阪湾、東京湾、椿油湾(徳島)でも、砂漠化は全くありません。
それは、河川が流れているからなのです。だから原因が水温ということはありえない。水温が原因なら、本州から砂漠化がどんどん広がるはずです。本州でも一部で砂漠化していますが、それは外洋に面したところです。
では、どうして外洋で砂漠化しているかですが、かつては外洋まで河川の影響があったのが、取水をしますから、その影響がなくなったのです。
日本海側の寿都の平均水温は昭和40年以降ほとんど変わっていません。水温が上昇したから砂漠化が進んだ、というのは意味がないのです。そういう議論をしても始まりません。
■砂漠化地帯と海草地帯の違い:河川→山
日本海は砂漠化が進んでいます。これは、ニシンがとれた頃、あるいは戦前・戦後の食料難の時代に木を切ったということもありますし、道路を造った問題もあります。
津軽海峡側の子安には、早期の縄文遺跡がありますから、おそらく8000年前から海藻地帯であり、無数のウニがいます。
なぜこれだけ違うのか。子安の海藻地帯の背後には山があります。そして、ここから無数の沢水が流れ込んでいます。これは道路の下を流れていますから、車から降りてみないとわかりませんが、150m間隔で無数に流れています。我々は水深10mのところを調査しましたが、明らかに陸水の影響を受けています。
石灰藻地帯、砂漠化した地帯と、小安の魚をつくる能力を調べてみると、かなりの違いがあります。ですから、日本海がいくら頑張っても魚がつくれない、ということを意味しています。
なぜこのように子安には海藻があるかというと、遠くの山からは河川を通して、近くの森林からは沢水を通して、陸水が沿岸をずっと覆っているということなのです。これが原因です。
日本海側がすべて砂漠化しているかというと、そうではなくて、河口域の水深3mくらいのところにはちゃんと海藻があるのです。1キロくらい沖に海に突き出た岩礁があり、その下は海藻地帯です。このあたりは石灰藻で真っ白なのです。ここだけなぜ海藻が生えるか、ということですが、ここにだけ違う海流が流れているわけではないので、河川の影響を受けているとしか考えられません。
江差から少し北の方に、乙部があり、その港の右側数百mに渡って、現在でもウニ漁、コンブ漁をやっています。ここには3〜4本の小川が入っています。少なくとも水深3〜4mまでは、このような海藻地帯です。なぜでしょうか。
積丹半島の野塚川から700m沖にかけては海藻地帯です。ここにだれかが魚礁ブロックを入れて6年目になりますが、現在でも海藻が生えています。それと同じものを砂漠化地帯に入れているのですが、これは真っ白なのです。我々も乙部に魚礁ブロックを入れて5年目ですが、なおちゃんと海藻が生えます。これは河川の影響があるとしか考えられません。
石灰藻は無数に胞子を出し、すぐ成長して、岩を真っ白に覆ってしまいます。石灰藻の胞子に、腐食物質(森林起源物質)を5ppmの炭素にして入れると、3日目には色が変わってきます。本当はピンクなのですが、真っ黒になって、分解して死んでしまうという現象が見られます。つまり、陸から来る腐食物質が、石灰藻と砂漠化を防いでいるということではないかと思います。 <スライド終了>
つまり、陸の森林起源物質が、コンブの成長あるいはプランクトンを育て、さらに、石灰藻を抑えるということをやっているのです。
私はこれがわかったときに、ものすごく感動しました。自然というのは偉大だ、と。これは人間ではおそらくできません。何百億円もかければ可能かもしれませんが、それは不可能です。自然に勝つということはできないと思います。
遠くの山から河川を通じ、沢水が海へ流れている。この沢氷がなくなったために、海は砂漠化してしまった。そして、現在は河口域だけに海藻が残った、ということではないかと思います。