1.調査の概要
1-1 調査手順.
沖合底びき網漁業における作業標準を策定するにあたっては、動作の分析が必要であると考えられる。しかし、過去に漁ろう作業のエネルギー消費量等を研究したものはあるが、動作の分析を行った研究はない。そこで、今回は陸上の生産現場で用いられている時間研究法を参考に、漁ろう作業毎に動作を細かい要素に分類して解析を試みた。その内容は、要素動作毎の頻度を算出するとともに、時系列で動作の変化をおこなった。
平成10年6月に、かけまわし漁法1隻、オッタートロール漁法1隻、11月にかけまわし漁法1隻、合計3隻に調査者が乗船し、漁ろう作業をVTR装置に記録し、動作パターンの分析を行った。
方法としては、MTM(method time measurement)法を参考に、作業を基本(要素)動作毎に分析をおこなった。また、操業時人員配置分析、及びレイアウト分析を行い、その結果を踏まえて作業標準を作成した。
1-2 実施内容
かけまわし漁法
・125トン型1隻
船籍港 北海道稚内市 乗組員18名 操業海域 羽幌沖 日帰り操業
乗船日 平成10年6月10〜11日
・80トン型1隻
船籍港 青森県八戸市 乗組員8名 操業海域 尻屋崎沖 日帰り操業
乗船日 平成10年11月25日
オッタートロール漁法
・125トン型1隻
船籍港 北海道稚内市 乗組員16名 操業海域 稚内沖 日帰り操業
乗船日 平成10年6月9日
1-3. 人員配置
沖合底びき網漁業を工程順に人員のレイアウトを表したものが次ページからのレイアウト表である。
沖合底びき網の漁ろう作業は漁ろう長の指揮、監督の下に行なわれており、人員配置表を作成するにあたり、「2.操業時人員配置表」で説明したとおり、総指揮としては漁ろう長のみで、操船をする船長、機械の操作と現場での指導者として甲板長を配置し、その他の者は単に甲板員として表示した。
1-4 レイアウト表
沖合底びき網漁業を工程順に人員のレイアウトを表したものがレイアウト表である。
工程毎の実際の配置は、漁ろう長をはじめ各作業員に至るまであらかじめ配置が決まっており、役付船員から配置に対する指示はほとんどなく、作業が開始されると同時に各人が速やかに自らの配置場所についた。
1-5 作業標準
動作分析の結果、人員配置、レイアウト解析の結果を踏まえて、漁ろう工程毎に項目、手順、注意点を明記した作業標準を作成した。
作成にあたっては、沖合底びき網漁業経験者により内容の点検を行った。
しかし、漁法は操業形態、漁業会社、船毎に異なっているために、全ての船舶にあてはまる作業標準ではないが、項目によっては沖合底びき網漁業全般に通じるものもあり、この中から自船に適合する部分を抽出して、自船独自の作業標準を作成し活用することを願う。
1-6 沖合底びき網漁業における作業動作分析
沖合底びき網漁船の作業について、ローラー等の機器に巻き込まれるなどの災害が発生しやすい揚網作業のワーピングエンドを操作する作業を中心に動作と、作業姿勢の分析を行った。
網をつり上げる作業を対象に、作業者の移動動作を見るために、作業場所と作業動線、滞留位置を分析した。
無理な作業姿勢により、作業者が足腰をひねったり、腰痛になると考えられ、揚網作業や、上甲板での漁獲物を選別する作業についての作業姿勢を分析した。